一般病棟でも注意しておきたいPICS(集中治療後症候群)についてわかりやすく解説。今回はPICS予防の1つ、ICU日記(ICUダイアリー)に関して、記載内容や注意点、運用方法などを紹介します。
集中治療による歪んだ記憶を正すICU日記が精神障害予防に
ICU日記(ICUダイアリー)は集中治療によって歪(ゆが)んでしまった記憶を正し、心理的回復を促すツールとして注目されています。これは、ICU滞在中に医療者・家族が患者の様子を書き綴り、患者の経験を説明するために保管しておくものであり、HarveyらはPICS発症の予防戦略の1つとして紹介しています1。
PICS発症の予防戦略
●補正可能なリスク因子の除去
●早期運動療法
●退院後フォローアップ
●早期からの心理学的介入
●ICU日記
●癒しの治療環境
●身体的・認知的・精神的状態の推移に関するチェックリスト
●ABCDEFGH(第3回参照)バンドル活用による早期抜管、早期ICU退室
●PADガイドラインに基づくせん妄の予防
(文献1より改変して引用)
ICU日記は、患者の立ち位置や現在の状況などの見当識の把握を助け、不安・抑うつ・PTSD症状を軽減することにより、PICSを予防する可能性があります2。日記をつけることは、患者のみならず家族のPTSD症状を減少させることが示されています3。
ICU日記に記載する内容・注意点
ICU日記に記載する内容や注意点は次のとおりです。
事前の準備
●ICU日記の表紙に、患者ラベルと自施設のラベルをつける。
●主治医もしくは担当医に ICU日記を開始することの許可を得る。
●患者・家族にICU日記を開始することを説明する。入院時オリエンテーションなどに合わせて説明するとよい。
記載する内容と運用時のポイント
●患者がどのように入院し、ICUに入室したのかから日記を始める。
●記載した日付、署名、職名を記載する。
●繊細な状況、医師の説明、今後の方針、機密性のある情報は避ける。
●ベッドサイドで患者や家族に口頭で説明し、安心してもらえるものだけを書く。
●患者が後で読むときにギャップがないように、毎日記載する。
●経過に変わりがなくても少なくとも1行は書く。
例:「あなたの状況に変わりありません」「人工呼吸器や血圧のサポートが必要な状態です」
●看護計画、カルテ、経過記録に日記を開始したと記載し、次のシフトにも周知できるよう申し送るようにする(患者情報用紙にも記載する)。
●日記が継続するよう、各勤務帯で記録することを看護指示として残す。
●日記は患者ごとのオーバーテーブルに保管する。
●抜管、気管切開、初めての離床、歩行など患者にとって重要なイベントについて書く。
●患者・家族、主治医・担当医、ICU看護スタッフ、メディカルスタッフなどすべてのスタッフの記載を歓迎する。
●専門用語には配慮するなど適切なものを心がける。
●他の同意書などの書類と同様の配慮をする。
注意すること
●患者と家族が望む場合、患者と一緒に写真撮影をしてよいが、患者の同意なしに患者・家族の写真を掲載してはならない(写真は家族が撮影したものを掲載する)。
●自施設のカメラで撮影した場合は、保管したメモリーや写真のコピーは消去する。
●後日写真を貼れるように日記にスペースを確保する。他の人がそのスペースに書き込むのを避けるため、写真スペースであることをわかるように明記する。
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