目標や優先順位の違いに対する対策や、実際の工夫は?
あみ(助産師) 患者さんにとって、リハビリテーション室内での目標と、病室などの生活場面での目標を立てたほうがいいのかなと思ったりします。もちろん、その際はリハビリテーションスタッフが評価してくれた患者さんの自立度を聞いたうえで、病室での様子などを伝えつつ調整すればいいのではないでしょうか。
いわゆる「できるADL」と「しているADL」の違いをお互いに知って、「しているADL」で患者さんの生活を重視するような考え方なのかなと思いました。
うめだ(管理栄養士) クリニックでは患者さんが思うゴールに向けて、各職種の視点で考えて、患者さんが一番望む生活をみんなでサポートしていくようにしていますね。同じ組織内で訪問看護、リハビリテーションも行っているのですが、日常生活での簡単な動作のリハビリテーションは看護師も役割を担っています。
さらに、「1人で外に出たい」「買い物に行きたい」など、患者さんの要望や自立度に合わせて理学療法士がリハビリの介入をしている状況もあります。病棟より役割分担が明確なので、動きやすいのだとは思いますね。
S.O(薬剤師) 薬剤師としては、板挟みになる場面もあるので、定期的な多職種のカンファレンスで客観的にすり合わせができるようにフォローを行いましたね。優先順位、方針がずれたときはいろいろな視点を入れ、腰を据えて調整することも重要かと思いました。
すま(作業療法士) リハビリスタッフが患者さんに直接かかわるのは、1日のなかでも1時間前後です。そのほか23時間をメインに支えているのは看護師なので、患者さん本人が安全にできる範囲を確保するため、看護師さんとの相談はより密に行っていますね。
あとは、本当に小さなことかもしれないんですが、言い方の問題も大きいと思います。リハビリテーションの人は、患者さんの身体能力や環境調整を細かく評価していて、その人ができるかできないかの判断には自信をもっていると思います。そのせいか、「〇〇は自立でやってください」と命令形になってしまいがちです。このときの言い方としては「〇〇がリハビリテーションでできるようになったんですけど、病棟で〇〇を自立にするにはどう思いますか」と尋ねてみる形にしてはどうでしょう。
こうした言い方を変えるだけで、コミュニケーションエラーを未然に防ぐことができますよ。
あみ(助産師) すまさんの伝え方の説明は、すごくわかりやすいです。どうしても一方的に言われると、仕事を押しつけられているような感覚になってしまいますよね。
まずは相手に聞いてもらえることが第一で、命令形で言いっ放しにならないように相互コミュニケーションがとれるよう、気をつけようと思います。
多職種連携のリアル【第5回】コミュニケーションエラー➂多職種が複数かかわった際のインシデント
この記事は『エキスパートナース』2020年7月号連載を再構成したものです。
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