多職種がかかわるインシデントへの対策や、実際の工夫は?

すま(作業療法士) 理想としては、同じ引き継ぎをするにしても看護師さんに、「今日かなり下肢が疲れる運動をしたので、ひざ折れがあるかもしれません」と一声かけることでしょうか。

 また、インシデントレポートは、僕の職場では「どっちも書く」ようにしています。片方が悪いのではなく、双方にミスがあることが想定されるので、リハビリテーションと看護から1枚ずつ書きます。ここをいつも看護師さんに任せていると、きっと不公平感が蔓延し、普段の連携がやりづらくなってしまうと思います。

あみ(助産師) すまさんの声かけは、すごくありがたいですね。忙しいなかでリハビリから帰ってきて、何に注意したらいいかなどが瞬時にわかると、すぐに対応に移れるのでうれしいと思います。

 インシデント、アクシデントに関しては、私のところでは経緯を確認して、関係があれば所属長やインシデントを取りまとめる係から、関係する他職種に連絡して記載してもらい、双方合わせて対策を練っていきます。重要なインシデント、対策は病院全職員にメール等でお知らせが来て共有されたりしている病院もありました。

S.O(薬剤師) 私のところでも、インシデントレポートは双方で記入するようになっています。また、インシデントをしてしまった当人でなくてもよいので、とりあえず報告をあげるような流れになっています。

 書く側の書きやすさをどのように担保するか、安全管理部門からのフィードバックの仕方が重要ですよね。形式をできる限り簡略化したり、上げたレポートを分析・フィードバックしたり、また上層部が現場任せにせず対策を検討する、という姿勢が必要だと思っています。

うめだ(管理栄養士) 私のところではインシデントレポートは、「宝物メモ」という名前をつけてスタッフ全員で情報共有して対策をとっています。この名前の意図は、誰でも起こしうることとして、二度と起こさないために、大切なものであるとスタッフ全員で認識をして対策を行っていくためです。

 宝物メモとして共有することが、組織の成長につながることを伝えているので、インシデント・ヒヤリハットまで共有しています。インシデントはスタッフ全員が起こったことに対して、当事者意識をもつことが大切だと思います。

 コミュニケーションエラーは、どの職種・場面でも起きる問題です。特に多職種とかかわることが多い看護師は、その場面に遭遇しやすいでしょう。小さなエラーが重なると大きな問題につながることもあるので、日ごろのやりとりから見直していきたいですね。

 今回のエラーに共通するのは「みんなこうだろう病」。自分の考えが正しく「みんなこうだろう」と決めつけてしまっていませんか?自分と相手の考えが同じとは限りません。エラーを防ぐには「私はこう、あなたはどう?」と尋ねるくせをつけてみてはいかがでしょう。

 第3~5回のポイントをまとめると次のようになります。

第3~5回のポイント

●コミュニケーションエラーは片方だけの原因ではない。
●視点の違いや優先度の違いを知り、そのなかでできることをすり合わせる。
●相手に話を聞いてもらえるように伝え方の工夫は不可欠。

多職種連携のリアル【第6回】コミュニケーションエラー④思い込みや主語の省略

この記事は『エキスパートナース』2020年7月号連載を再構成したものです。
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