理学療法士の視点からの解決策
たみお(理学療法士) 運動機能面で見ると、一時的に歩いて買い物に行けるまで改善したとのことなので、とても順調に介入できていたんだなと思います。詳しいADLの部分まではわかりませんが、歩行能力で考えると病気になる前に近い状態だったのではないでしょうか。
推察ですが、この状態のときは患者さんもセラピストも精神的に、すごく前向きに考えることができていたのではないかと思います。がんによる症状の悪化・改善の度合いは予測が難しいですが、今回のこのケースで考えると、家族は遠方に住んでいて急には対応できないので、状態が改善してきていることをこまめに家族に電話などで報告しておいたほうがよかったですね。今どのくらいの状態なのか、これくらいになったら家に帰れそう、などの情報を共有できていれば、家族も早めの対応をとることができたかもしれません。
医師や他職種に対しても同じで、身体機能の状況や経過をもっと報告できていれば、対応が変わっていたかもしれないですね。
それから、多職種が同じ目標をめざせていたかも気になるところです。例えば、医師は在宅は厳しいと思っているかもしれないし、患者さんがときおり看護師さんに話していた「家に帰りたい」という希望が、医師には届いていなかったかもしれない……。
と言っても、医師となかなかコミュニケーションがとれなかったとのことなので、対面が難しいならメモやカルテに文章で細かく状態を記入したり、医師に近い職種(看護師など)を介して状態を伝えてもらったりと、工夫が必要ではないかと思いました。
看護師の視点からの解決策
中野(看護師) 運動機能面は1か月以上のリハビリの介入で、自宅に戻れるレベルは維持できていたのだと思います。そんななか、医師からも治療の中断の話もありつつ、患者さん本人は「治療をがんばりたい」と言っているため、その意思を尊重した形になります。一時的に効果があったときは転機でもあったので、そういったところで再度、意思確認が必要だなと感じました。
推測ですが、治療途中で吐き気や脱毛が生じ、また、気分の低下や脱毛による羞恥心などもあり、自宅に帰る自信も減退してきていたのではないかなと思います。医師からの説明のあとに「治療を継続したい」と言っていますが、看護師としては、もう少し詳しく心情や意向を確認できているとよかったのではないでしょうか。
吐き気に対して、管理栄養士さんなどとの相談や調整で介入でき、脱毛に関しては帽子やウィッグなどで羞恥心に対しても介入できるのかなと思います。例えば、僕がいた病院では、がん相談支援センターというところでそういった対応等をしていました。
また、家族も遠方ということで介護に介入しにくい環境であり、入院してもらっているほうが安心という状況もあったのかなと思います。家族にも「訪問看護やかかりつけ医を調整するなどして、一時的にでも自宅に戻れる」ことを説明できていると協力体制もつくれたのかなと思います。今回のケースでは、一時的に体調が回復しているタイミングで主治医との相談がうまくできず、方針が後手後手に回っている印象でした。
カルテの記録や掲示板機能やメモ機能でもやりとりがあれば、医師や多職種とコミュニケーションが円滑に行えたのではないかなと思います。医師に限らずPTや管理栄養士、MSWなどともカンファレンスができる環境や機会が必要だったのかなと思います。