更年期の症状として現れるめまいや関節痛、疲労感、肩こり、頭痛、閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)。それぞれの対処法を紹介します。
めまい
「しょっちゅうめまいが起こるようになって、仕事をお休みしないといけない日が多くなりました」
内耳性めまいが起こりやすくなる人がいます。めまいが起こったときには、抗めまい薬を使用したり、良性発作性頭位めまいの場合は、エプリー法という体操をするなど、通常のめまいへの対処と同じ対処をします。
女性ホルモン補充療法や漢方薬の使用、日常生活の見直し(無理しすぎない)により、めまいの起こる回数が減ることもあります。
心房細動の既往など、若くても脳梗塞ができやすい素地がある方のめまいでは、小脳梗塞などによる中枢性めまいを除外することが大切です。
関節痛
「朝、手指がこわばって30分ほど動きません」
エストロゲンは関節を守るはたらきをしています。このため、更年期にエストロゲンが急低下すると、急にあちらこちらの関節が痛くなることがあります1。
正常な関節はなんともないままです。痛みを生じるのは、それまでに変形性関節症や臼蓋低形成など、なんらかの炎症が起こる素地があった関節です。多いのは、指の関節が痛むことです。朝のこわばりがあるので、リウマチを心配する方も多いようです。女性は指をよく使うので、指に変形性関節症を生じていて、それが更年期に痛みだすのです。
ヘバーデン結節(図1)は、指の変形性関節症の後遺症として残る指の突起(第1関節が変形する)ですが、更年期に痛くなってきた指に何も手当しないと、できやすいです。一度できると治らないので、できるだけ痛い指に負担をかけないように、テーピングなどで工夫したり、NSAIDs外用薬を塗り込んだりするようにしましょう。

その他、骨盤、腰、膝、いろいろな関節に症状が出ることがありますが、いずれも、なんらかの器質性の関節機能障害があることが多いです。整形外科で適切にケアしてもらいましょう。
更年期障害に伴う関節痛は、あまり腫れないのが特徴です。更年期の関節痛でも、赤く腫れたり、熱をもったりしている場合には、膠原病の可能性を調べたほうがよいことがあります。膠原病の好発年齢は、20代と60代にありますので、腫れて熱をもった関節炎は更年期障害と決めつけないようにしましょう。
疲労感
「これまでは、1回のお出かけで平気で2〜3の用事を済ませていたのに、いまは1つ用事して帰ったらもうヘトヘトで、家事をすることもできなくなってしまいます」
更年期には、「何がどうというわけではないのに、ひたすら疲れやすい」とか、「朝がどうしても起きられない」という方は多いです。
更年期にどうしてそうなるのか、詳しいことはわかっていません。女性ホルモン補充療法や漢方療法が奏功することもありますが、何より、この時期は無理をしないことが大切です。
女性は、子育て、介護、仕事、地域活動とさまざまな仕事をこなすマルチタスクテイカーですが、更年期の「弱り目」のときには、他の人のケアばかりではなく、自分自身をケアするようにマインドシフトしてみましょう。ご自分が動けなくなるまでご家族やまわりに尽くすことを、ご家族やまわりの人は望んでいません。「最近体調が悪いので」と、タスクシフトを心がけてみましょう。
肩こり、頭痛
「頭痛が起こりやすくなりました」
更年期に肩こりが強くなる女性は多いようです。肩がこると、大後頭神経の起始部が圧迫されて、緊張性頭痛が生じやすくなります。ですから、「更年期に急に頭痛が起こりやすくなった」という方は、ほとんどが緊張性頭痛です。
緊張性頭痛では、運動や温熱、マッサージなどが症状を緩和してくれます。葛根湯(かっこんとう)や、胃が弱い人には桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)などの漢方薬もおすすめです。
閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)
「しょっちゅうトイレにいきたくなります」
「セックスが苦痛です」
更年期には、エストロゲン低下のために外陰部が変化します2。
具体的には、大陰唇(パンティーラインにふれるところ)のボリュームが減り、小陰唇(ビラビラしたところ)が固く小さくなります。皮膚や粘膜も薄くなります。こういった変化から、「なんとなく自転車に乗ったときの感じが違う」と表現される方も少なくありません。
外陰部が変化してなんともない方もいらっしゃるのですが、多くの方が、外陰部が乾燥したり、かゆみや痛みを生じたり、性交渉のときに濡れにくくなったり、入り口が痛くなったり、尿道口まわりの粘膜菲薄症状として、しょっちゅうトイレに行きたいと感じたり、尿もれしたりするようになります。膀胱炎を繰り返す人もいます。
こういった、外陰部の萎縮に伴う症状をまとめて閉経関連尿路生殖器症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)といいます。GSMは保湿や局所のホルモン製剤、レーザー治療(自費)でケアすることができます。
- 1.Dugan SA,Powell LH,Kravitz HM,et al.:Musculoskeletal pain and menopausal status.Clin J Pain 2006;22(4):325-331.
2.Portman DJ,Gass MLS,Vulvovaginal Atrophy Terminology Consensus Conference Panel:Genitourinary syndrome of menopause:new terminology for vulvovaginal atrophy from the International Society for the Study of Women’s Sexual Health and the North American Menopause Society.Climacteric 2014;17(5):557-563.
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この記事は『エキスパートナース』2022年7月号特集を再構成したものです。
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