事例①「食後の嘔気・嘔吐」「両下肢の脱力・しびれ」で緊急搬送された男性

 Aさん(60代・男性)は、奥さんと2人の息子との4人暮らし。自宅で食後に嘔気・嘔吐、両下肢の脱力・しびれがみられたため、近医を受診。血管障害の疑いで頭部CTを撮影しましたが、特に異常がみられなかったため、緊急搬送されました。既往は、糖尿病、高血圧、肝細胞がん(60歳時、肝亜区域切除術後)。

その他
●肝細胞がんの手術以降、仕事はしていない。
●食事や移動など日常生活はすべて問題なく自分で行える。
●飲酒・喫煙はしていない。
●近医で高血圧と糖尿病の通院加療。

この状況で鑑別が必要な疾患

脳血管疾患
●脳卒中
循環器疾患
●急性心筋梗塞
●慢性閉塞性動脈硬化症
●急性動脈閉塞(血栓性)
●上腸間膜動脈閉塞
●大動脈炎症候群
●Leriche症候群
消化器疾患
●食中毒(細菌性、毒物、シガテラ中毒)
●イレウス
●胃潰瘍・十二指腸潰瘍
その他
●脊髄梗塞
●脊髄腫瘍
●電解質異常(低カリウム血症)など 

第1ステップ 症状・病歴を詳しく尋ねる 

 発症前のことから発症に至る経過について、「再現ドラマ」がつくれるように、少なくとも自分で想像できるように聞くのがよいでしょう。本症例では「夕食後から」ということですが、
●食直後なのか数時間経っていたのか
●同じものを食べていた家族には異常はないか
●何をしていて発症したのか

を聞くことが大切です。

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