執刀する側から、手術を受ける側に。あとは「神頼み」あるのみ
結局、術前の抗がん剤治療の効果は思ったほど得られませんでしたが、予定通り手術を行うことになりました。
今までさんざん大腸がんをはじめとする手術を執刀してきましたが、自分自身はまったく手術を受けたことはありません。ただ、こうなった以上は「まな板の上の鯉」状態です。まずは心臓や呼吸機能などの術前の検査を受け、病変の評価を行ったあとは術前の処置へと進みます。そのなかで基本的に自分自身でできることは、体調を崩さないこと、体力をつけておくこと、そして栄養をしっかりと摂ることなどしかありませんが、もう一つできることと言えばやっぱり「神頼み」です。
がん治療にかかわっていると、患者さんやご家族から「どこどこの神様はがんに効くと聞いたのですがどうですか?」「今度お祓いに行きたいのですが大丈夫ですか?」とか「○○温泉は効果ありますか?」などいろいろ質問されることがあります。医療者のなかには「そんなことしても無駄だよ」などと頭ごなしに否定する人もいますが、自分としては治療の妨げにならないことであればあまり否定はしてきませんでした。決して信心深いほうというわけではなく、そのことが本人の治療へのモチベーションや家族などの希望にもつながる可能性があると思っていたからです。
ただ今回のような状況になってしまうと、本当に「あとは神頼み」だということがよくわかりました。術前検査もすべて終わってからしばらく時間が空いたので、家内と2人で少し遠出をしようということになりました。最初はお世話になった方々と会ってくることだけを考えていましたが、せっかくなので「がん封じ」を掲げているお寺や神社を探してお参りをしてこようということになり、ネットで検索し行程を考えて、結局5か所(京都:平等寺・蛸薬師堂、奈良:大安寺、東京:唐泉寺、埼玉:行田八幡神社)でお参りやお祓いを受けてきました。
昔から「何事もやるなら徹底的に」というポリシーを持っていますが、がん封じにも発揮してしまったみたいです。あとは、お祈りしたたくさんの神様が、競合されることなく応援してくださることを願うばかりです!
がんになった外科医 元ちゃんが伝えたかったこと【第4回】手術、そしてICUへ
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西村元一著
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