【後編】がんゲノム医療ってどんなことを行うの?②がんゲノム医療が抱える課題

おさえておきたいこと

がんゲノム医療について
●がんは、遺伝子病気
●がんゲノム医療は、変異のある遺伝子を特定し、 治療に結びつける

遺伝子を対象とした薬剤は、すでに医療に使用されている

 「がんゲノム医療を受けたいんだけど、どうすればいいかな」。
 親戚のおじさんが“がん”と診断されてしまったようで、看護師であるあなたに相談したいと言っています。

 こういうのって、けっこうみなさん経験されているシチュエーションではないでしょうか。あなたはなんと答えるでしょう?

 ゲノム(=「遺伝子」と思ってもらって差し支えありません)というと、何を思い浮かべますでしょうか。遺伝子組み換え食品? ゲノムダイエット?

 じつは遺伝子を対象とした技術はみなさんの生活にすでに浸透しており、医療においては肺がんのEGFR遺伝子に対するゲフィチニブ(イレッサ®)、胃がんや乳がんのHER2遺伝子に対するトラスツズマブ(ハーセプチン®)などは、すでに現場で使用を経験された方も多いかもしれません。

 それまでは1年前後の平均余命であった肺がんや乳がんを、うまくいけば5年とか10年とか、どんどん長生きできる可能性を提供できるようになった、21世紀のがん医療を変えたエース級の革命的な薬です。

がん細胞は増殖スピードが速く、どんどん増殖する

 こういったなんらかの遺伝子変異に対する薬が実現できた背景には、「がんは遺伝子の病気である」ということがあります。

 遺伝子が病気になるなんてなんだか大変なことが起こっているような感じですが、じつは毎日毎日わたしたちの身体の中では遺伝子が傷つき、壊され、変異した遺伝子がたくさん産み出されています。

 そういった変異遺伝子をもつ細胞は、身体に備わる免疫の力によってふだんは身体から排除されるのですが(図1-A)、起こった遺伝子変異が非常にたちの悪いものであったり、免疫の調子が悪かったりすると、排除できずに「がん細胞」が生まれます(図1-B)。

図1 細胞のがん化

 がん細胞は、普通の細胞よりも増殖のスピードが速く、身体の中でどんどん増殖していき、何か月かかけて大きくなってはじめて、ふだん私たちが目にしている肺がんや乳がんのような形になっていきます。
 どんな遺伝子に異常が起こってがんになってしまったかというのを調べ、治療に結びつけようというのが、「がんゲノム医療」です。