『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』【医療漫画を語り合う会：番外編】

　いまや学習のツールは、教科書や参考書からYouTubeといった動画教材、VRまでさまざま。そのひとつとして、医療漫画にも注目したいところ。医療監修や取材によって細部まで丁寧に作り込まれた作品や、原作者が医療者ということもあって現場のリアルが身近に感じられる作品などがそろいます。

「こういう看護師、医師がいたらいいなぁ」
「これは同じような経験したことがある、大変だよね」
「そうか、こうした考えはなかった」
「名前は聞いたことがあるけど、実際はこんな感じなのか」
などと、共感する場面も多いのではないでしょうか。

　そんな医療漫画について、看護師のかげさん、ナースの大森ちゃん、そしてライター・白石弓夏の現役看護師3人が、座談会形式で語り合う企画。今回からは1人ずつ、医療漫画をひとつ選んでプレゼンします。ここ最近読んだ作品のなかからおすすめを紹介してもらいました！

『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』

著：佐原ミズ、医療監修：北岡寛己／ゼノンコミックス

育児に奮闘するシングルファザーと、ギャップが魅力の小児科医

※一部作品のネタバレがあります

白石　私が紹介するのは『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』です。2023年に出た新しい漫画なんですが、まず、このコミックスの表紙のビジュアルがものすごく好みで…。電子書籍と紙の両方買っちゃいました。

かげさん　SNSでも話題になっていた作品ですね。

白石　そうなんです。この漫画の特徴からお話しさせてもらうと、主人公はシングルファザー。妻を亡くして、小さな子ども2人と暮らしているんですが、そのシングルファザーの育児奮闘記みたいな側面と、医療の話がうまくミックスされているんです。医療者が読んでも小児科の勉強になって、同じように子育てしている人にとってはすごくあるある（「胃腸炎で一家全滅」など）がつまっているだろうし、子育てが一段落した人が読んでも懐かしいなぁって感じられるんじゃないかと思います。

大森ちゃん　主人公のパパに感情移入しちゃいますよね。

白石　そうそう、「羽根田」なのでハネチンってあだ名がつけられるんですけど、真面目で仕事熱心で、でも不器用などこにでもいそうなサラリーマンなんです。そのハネチンと対照的なのが小児科医のブッキー（琴吹）先生。ブッキー先生がこれまたインパクトがすごくて、普段はヘヴィメタル好きで派手な衣装とメイクをしているんです。でも、病院では素顔のイケメンで…（笑）。

かげさん　（笑）医療漫画だけど、そういう楽しい要素もあるんですね。

白石　ですです。でも、単に面白いだけじゃなくて、グリーフケア（死別や喪失による悲嘆への対処）の要素もあったりするんです。ハネチンが育児に奮闘するなかで、うまくいかないことが多くてちょっと投げやりになったとき、亡くなった妻のことを思い出す場面もあって。妻の愛情や育児の軌跡をたどる、笑いあり涙ありの作品になっています。

　それと、小児科の診療場面がとても微笑ましくて、ブッキー先生の親目線での言葉と、子ども目線のおしゃべり、両方が描かれているんです。これが小児科出身の看護師としてはうれしいポイントで。よく子どもは置き去りにして、大人だけで話を進めてしまうことがあるので。

大森ちゃん　たしかに、患者さんの家族の気持ちと、子ども自身の気持ち、両方わかる先生は貴重かもしれません。

白石　そうなんです。だから、医療者が読んでも勉強になるし、一般の人が読んでも楽しめる。そういう幅広い魅力がある作品だと思います。あと、個人的には、ブッキー先生のメイクしている姿と素顔のギャップがすごく好きで（笑）。そういうよこしまな気持ち込みで読んでもいいと思います！！！

『ハネチンとブッキーのお子さま診療録』第1話の試し読みはこちら

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