『ICUナースが書いた 補助循環の管理がもっとできるようになる本』は、ICUで「おさえておくべき必須テーマ」をていねいに、わかりやすく解説した新シリーズの1冊目。補助循環管理を行っている患者さんを受け持つときにICUのエキスパートナースが、何を、どうみて、動いているのかがわかります。
今回は特別に、試し読み記事を公開します。ぜひチェックしてみてください!
第4回は、PCPS管理のポイントについてです。
PCPS管理のポイントは、非常にたくさんあります。ここでは、特に私が「経験的に重要」と感じていることを中心にまとめていきます。
IABPと同じ視点で考えていくと、わかりやすいでしょう。
「電源」「酸素・空気配管の接続」は必ず確認
PCPSの場合も、正しくコンセントに接続されているか確認します。
加えて、PCPSでは、人工肺を用いてガス交換を行うため、酸素および空気配管への接続を確実に確認することも必要です。
確認すべき項目は多岐にわたりますが、なかでも以下の内容(PCPSを駆動するうえで重要なポイント/かならず確認しなければならないポイント)に的を絞ってまとめます【表1】。
【表1】PCPS駆動時のチェックポイント
●コントローラー
<回転数>
・「遠心ポンプを1分間あたりどのくらい回すか」を示している
・通常、回転数が増えれば、流量も比例して増えていく
・回転数が増えているのに、流量が増えていないときには原因検索が必要
→脱血不良、脱血する血液が少ない状態(脱水など)の可能性を示唆する
<流量(flow)>
・「1分間あたり、PCPSからどのくらいの血液を送血しているか」という量を示している
・流量(flow)の表示の近くに、CI(心係数)、SvO2(脱血している混合静脈酸素飽和度)が表示されている場合もある
<血流計>
・「流量(flow)を測定」している送血側のセンサー
・流量が表示されなくなった場合などには、原因検索が必要
→血流計が外れていたり、測定できなくなっている場合もある。血流計が外れていないのに流量が表示されない場合には、センサー部分にジェルを塗ると改善する
●送脱血回路
<血液の色>★暗赤色(静脈血)か新鮮血色(動脈血)か
・通常は「人工肺で酸素化された血液」が流れている送血回路は新鮮血色(脱血回路より明るい)となっている
・送血回路が脱血回路と同じような暗赤色の場合は、酸素供給の異常がないか確認し、すみやかに報告する必要がある
➡人工肺での酸素化能が低下している(人工肺の膜の機能が低下している)疑いがある
●遠心ポンプ
<異音>★「キリキリ」「カタカタ」などの音は異常のサイン
・通常は「モーターが回転する静かな平坦な音」しか聞こえない
・細かなキリキリしている音が鳴っている場合や、カタカタ震えながら音が鳴っている場合などには異常が示唆されるので、経時的な確認が重要
➡ありがちなのは、遠心ポンプの軸部分に血栓が付着して、異音が生じている場合
➡筆者は「ポンプ内部の車輪軸が破損して異音と振動が生じていた」という怖い経験をしたこともある
●人工肺
<膜の色の変化>★暗赤色になっていたら血栓のサイン
・人工肺では、細かな繊維の管の中に気体(酸素・空気)を通し、その周囲に血液を流し、ガス交換を行っている
➡人工肺には血栓が生じやすいため、必ず数時間おきに確認する必要がある
・血栓が生じると、人工肺の外観をきめ細かく確認したとき暗赤色に見える部分ができる。血栓を見逃し、体内に流出させると危険なため、注意深く観察することが重要
➡臨床では、ペンライトの光などを当てながら、見逃しのないようじっくり確認している
・PCPSの管理方法によっては、人工肺で血液の温度調整もしている場合があるため、あわせて温冷程度を確認することも重要
➡この場合、送血回路も肌温度程度になっている
●酸素ブレンダー
<酸素濃度計>
・酸素配管からくる純酸素と、空気配管からくる空気を混合させ、安定した酸素濃度を作れるように調整する部位
・全身の酸素化を考える場合には、PCPS側の要素(PCPSを介して逆行性に送血する動脈血)、そして人工呼吸管理側の要素(自己肺を経由して自己心拍により流入してくる動脈血)の両方の影響を受けることも考慮する
<酸素流量計>
・人工肺の中に「どれくらい酸素を流すか」を調整する部位
➡酸素流量調整は、人体における肺内の換気状況と等しいため、二酸化炭素の排泄状況の調整にもつながる
・ABGで、PaCO2貯留傾向(呼吸性アシドーシスあるいは代謝性アシドーシスの進行により呼吸代償がうまくいっていない場合など)であれば、人工呼吸器での換気設定に加え、酸素流量調整を行う
・ウェットラング(人工肺に湿気が溜まる場合)への対応として、一時的に酸素流量を上げて水分を勢いよく出すときは、必ず酸素流量を戻す必要がある
➡酸素流量を戻し忘れると、体内で過換気状態になっているのと同じ状況になるので、呼吸性アルカローシスへと進展する可能性もあり得るため、定期的に確認することが重要
ICUナースが書いた 補助循環の管理がもっとできるようになる本
齋藤大輔 著、山下 淳 医学監修
B5・128ページ・定価 2,420円(税込)
照林社
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