『ICUナースが書いた 補助循環の管理がもっとできるようになる本』は、ICUで「おさえておくべき必須テーマ」をていねいに、わかりやすく解説した新シリーズの1冊目。補助循環管理を行っている患者さんを受け持つときにICUのエキスパートナースが、何を、どうみて、動いているのかがわかります。
今回は特別に、試し読み記事を公開します。ぜひチェックしてみてください!
第2回は、アセスメントのポイントについてです。
患者にとって「何がプラス/マイナスなのか」は、補助循環の目的から判断する
補助循環管理の導入時期も、軌道に乗っている時期も、補助循環の目的である血流の安定化と全身の酸素化を維持していくことが重要です。臨床では、この2つの目的を阻害する「マイナス要素」を早期に排除し、可能な限り「プラス要素」となるケア介入を行うことが求められます。
マイナス要素の多い状況にある場合、プラスの要素を見つけ出して状況改善に取り組むといった微妙なさじ加減も重要です。予測して防ぎ得るリスクも多いですが、侵襲的治療や管理を継続するうえでは、対症療法的にそのつど対応策を講じなければならないことも少なくありません。そのような臨機応変な対応を行うためには、以下の3つに分けて考えていくのがポイントとなります。
では、補助循環管理を継続していてよくみる「貧血の進行(血清Hb値の低下)」という症状を例に挙げ、❶~❸の視点で考えてみましょう【表1】。
しかし、【表1】からもわかるように、なかなか「マイナス要素」と「プラス要素」を振り分けて考えづらいのが臨床の難しいところです。病態や治療、補助循環管理に伴うことが複雑に関係してい
ることを考慮しながら、方向性を考えなければなりません。
患者は、これらの病態すなわち身体的レベルの変化に加え、精神・心理・社会的レベルの変化を生じるため、心身の両面をみつつ治療・看護ケアを具体化していくことも、非常に重要な視点となります。全人的な看護の重要性が問われることが、よくわかるでしょう。
次頁からは、「補助循環管理中、血圧が低下した」場合について一緒に考えていくことにします。
「循環管理に視点を置いたアセスメント」を行うのが大前提
補助循環管理を行っている患者の血圧が低下した場合、まずは循環管理の視点を軸に、身体面で起こっている出来事に対して、以下のような流れで思考を展開していきます。
しかし、補助循環管理中には、上記の視点だけでは解決策が見当たらない状況にも、しばしば直面します。
血圧低下が生じ、迅速・的確に対応しても、病態の深刻さによっては思ったとおりに改善しない場合もあります。その結果、脳の低酸素・低循環や、せん妄・高度の不穏が生じることも少なくありません。その状況が持続すると、さらに循環・呼吸にも影響が及びかねません。本来であれば、鎮痛・鎮静薬などの薬理学的介入も検討しますが、循環動態が不安定だと、なかなか使用・増量しにくいのも事実です。
このような場合、全人的な視点で患者を看る―患者の届けられぬ声を拾い上げる―べきだと私は考えます。
補助循環管理中の不穏・せん妄のケアも考える
ここで、状態のよくない補助循環管理中の患者にときどき出現する不穏・せん妄についても考えてみましょう。
補助循環管理を行っているときにせん妄・不穏をきたした患者は、もしかしたら、以下のような状況にあるのかもしれません。
もちろん、上記を訴えた患者が、病態に合併する脳機能不全に陥っている可能性もあります。しかし、病気や身体の側面も看みながら、それ以外の側面のリスクに気づき、適切なケアを実践することが肝要だと私は考えています。
ICUという特殊な療養環境下であっても、患者を全人的にとらえ、かかわっていくためには、日々の業務の忙しさに忙殺されないように立ち止まり、考えていくことが重要だと私は考えます。
ICUナースが書いた 補助循環の管理がもっとできるようになる本
齋藤大輔 著、山下 淳 医学監修
B5・128ページ・定価 2,420円(税込)
照林社
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