8月に発売された『ベッドサイドで困ったとき「私たち、こうしてます!」 実践力をUPするケアの技術』(聖マリアンナ医科大学病院 看護部 編著、照林社発行)では、若手ナースの迷いや困りごとを「スタンダートな看護技術」+先輩たちの「アセスメント・応用力」で解決!実践力が身につく1冊です。

 今回は特別に、試し読み記事を公開します。この機会にぜひチェックを!

ココに困った…

夜勤の日、Bさんの朝食下膳のために向かったところ、Bさんは食事には手をつけず、横になって休んでいた。悪心と口腔内に潰瘍(口腔粘膜炎)ができているため、「しみるから、歯みがきはしたくない」と言っている。今は骨髄抑制期だと思うが、感染予防の目的でマウスケアをしてもらうためにはどうしたらいいの?(看護師1年目・さくらさん)

担当する患者さんの情報

  • Bさん、70 歳代、男性。
  • 悪性リンパ腫と診断され、はじめて抗がん薬投与をして8日目。
  • もともとADLは自立しており、認知症なし。
  • 朝の体温は37.5℃。
  • 悪心や口腔内痛があり、食事が摂取できない。
  • 持続点滴をしている。
  • 内服は、なんとか飲み込むことができていた。

 さくらさんはガーグルベースンを持っていき、水で含嗽をしてもらおうと準備しました。B さんは水を口に含み、一度含嗽してくれましたが、やはりしみてしまい、もうしたくないと言いました。
 十分に口腔内を清潔にできていないと思いましたが、Bさんに「しみて、もうしたくない」と言われてしまったので、そのまま引き下がるしかありませんでした。

スタンダードのケア
●口腔粘膜炎による疼痛が強く、ブラッシングが難しい場合は、まず含嗽を勧めてみる。

「私たち、こうしてます!」先輩ナースからのアドバイス

がん薬物療法中は含嗽を取り入れる

 口腔粘膜炎はがん薬物療法のレジメンによって差がありますが、薬剤投与7~14日目に起こりやすく、10~12日目が症状のピークといわれています。Bさんのつらさに理解を示しつつ、含嗽を促すことができたことはよかったと思います。まずは含嗽が一度でもできたことを賞賛しましょう

 口腔粘膜炎の好発時期は、骨髄抑制による好中球減少時期とほぼ同時期です。口腔内の微生物が入り込みやすくなり、敗血症などの全身の感染症につながります。したがってBさんのつらさに理解を示し、できているマウスケアを賞賛しながら継続することが必要です。

 疼痛が強い場合は、水ではなく、ぬるめの湯水(微温湯)の含嗽や、医師の処方を仰ぐことも検討しましょう。生理食塩水やアズレンスルホン酸ナトリウム顆粒、グリセリン、リドカイン塩酸塩(キシロカイン®液4%)の使用は、口腔内乾燥や疼痛緩和にもなります。
 1日6回以上、口腔内に水を行きわたらせ、特に口腔底と舌の裏側が水で湿るように行う含嗽
も有効です

疼痛が強い場合に取り入れたい含嗽液

●微温湯
●生理食塩水
●アズレンスルホン酸ナトリウム顆粒
●グリセリン
●リドカイン塩酸塩(キシロカイン® 液4%)

疼痛緩和につながる含嗽法

1.山﨑知子編:超実践!がん患者に必要な口腔ケア―適切な口腔管理でQOLを上げる―. 全日本病院出版会,東京,2020.

ベッドサイドで困ったとき「私たち、こうしてます!」
実践力をUPするケアの技術

聖マリアンナ医科大学病院 看護部 編著
B5・160ページ、定価 2,530円(税込)
照林社

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