特に意識して水分出納(in-out)を確認しなければいけない状況や病態とは?今回は、体液の機能や、in-outを見ることの重要性を解説します。

生体からのSOS信号の原因を探るため、in-outの確認を

 医療機器の進歩は目覚ましく、各種バイタルサインは患者監視モニターにより容易に計測されるようになりました。現在では、患者の「発熱」、および「不整脈」「徐脈・頻脈」「血圧異常」などの変化は、瞬時にアラームにより警告されます。

 しかし、これらはいずれも“病態の結果だけを示すもの”であり、変化に至った原因までは知らされません。患者の変化を察知したナースは、医師への報告を行うと同時に、原因検索を進めることで、より適確で早急な対処が可能となります。
 そんなときナースは、すぐにin-out(水分出納)を見る習慣がありますでしょうか?医師から「in-outは?」と問い合わせられて、はじめて見るのでしょうか?

体の約60%を占める体液は、以下の機能を担っている

 人の体は、体重の一定量(約60%)が体液により占められています。体液は、以下の機能を担っています。

①体に必要な酸素や栄養素を運び込み不要となった老廃物を運び出す機能
②体で産生された過剰なエネルギーを放出する機能

体液の機能

 この体液のはたらきによって、体のホメオスターシス(恒常性)が維持されているのです。

脱水、溢水、出血により体液量を一定に保てなくなると、生体からSOS信号が!

 体液の量を一定に保つために生体ではさまざまな機能がはたらいています。その機能が破綻する(疾病時)と体液不足に対しては輸液が、体液過剰に対しては利尿薬の投与や水分制限が必要な病態になります。

 それでも体液を一定量に保てなくなると(「脱水」「溢水」「出血」など)、生体からSOS信号が発せられます。in-out が乱れたとき、倦怠感、頭痛、ひいては意識レベル低下および発熱、頻脈、低血圧などの“SOS信号”として発信されるのです。

体液が一定量に保てなくなる脱水、溢水、出血

 もし、SOS信号の原因が“in-outの乱れ”から生じたものだと気がつかなければ、「発熱したから解熱薬」「頻脈だから抗不整脈薬」「低血圧だから昇圧薬」という対症療法だけが施され、根本的な原因追及がなされないままに終わってしまいます。

 ナースによって、生体から発せられたSOS信号がin-out の乱れからくるものだと提言されることで、根本的な病因の究明につながり、正確で早急な対処法が施されます。SOS信号は、見逃してはならない、早急な対応が必要な病態が体に起こっていることを示すメッセージです。

たかがin-out、されどin-out!

 この連載では、SOS信号が発せられたときに、その原因としてin-out を確認しなければならない病態を再確認します。見逃してはいけないサイン、in-outの乱れを示すサインを、状況別および環境別に示し、ナースがどのように対応すべきかを解説します。

 「たかがin-out」と思われていた(かもしれない)読者の皆さまが、すべての病態においてバイタルサインと同様に頼りになるパラメータとして、「されどin-out」と、再認識されることを期待しています。

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※この記事は『エキスパートナース』2016年10月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。