特に意識して水分出納(in-out)を確認すべき状況や病態とは?今回は下痢・嘔吐の場合の水分出納管理についてです。水・電解質の喪失による低張性脱水に注意しましょう。
「in-out(水分出納)をみるのはこんなとき!」の連載まとめはこちら
脱水(in<out)

下痢・嘔吐で水・電解質を喪失すると脱水の危険がある
下痢・嘔吐は、何らかの原因により消化管での通常の消化・吸収が障害された状態、または生体の防御機能によって起こります。
下痢の場合にはHCO3-の喪失による代謝性アシドーシスに、嘔吐の場合には胃酸のH+の喪失により血漿内のHCO3-が増加するため、代謝性アルカローシスとなります。
成人では1日に7Lもの消化液が分泌されています。この量は経口摂取量よりはるかに多く、消化管における水・電解質の輸送がきわめて多いことがわかります。下痢・嘔吐によって多量の水・電解質を喪失すると、急激に脱水に陥る可能性があるといえます。
下痢・嘔吐出現時のin-out管理は、その原因と、水・電解質の喪失の程度について理解することがポイントです。
下痢・嘔吐のときにin-outを見るコツ
out:嘔吐により喪失される水・電解質の組成を考える
消化液のほとんどが小腸・大腸で吸収されることから、上部消化管液はほぼ水分であり、嘔吐により排出された量が水分喪失量と考えます。
消化液の電解質組成は部位によって異なり(表1)1、電解質の喪失を知るには嘔吐物の内容を把握することが重要です。
例えば胃液中の電解質組成はNaよりClが多く、そのぶんClの喪失も多くなると思われますが、純粋な胃液のみの嘔吐だけではなく、膵液や胆汁あるいは小腸液が加わることもあります。
一般的に嘔吐物のpHが4.0以下の場合であれば胃液が中心であり、4.0以上の場合は腸液が混在していると考えられていますが、現場でpHを測定することはあまりないと思われます。臨床の場では吐物の色や性状、臭いなどで鑑別をしていきましょう。
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