感覚障害の基礎知識を紹介。症状やメカニズム、種類、触覚・痛覚・温度覚の観察、対応のポイントなど、看護師が知っておきたい要点を解説します。
感覚障害
●触覚の観察
●痛覚の観察
●温度覚の観察
↓気づきたいポイント
●お風呂で熱いお湯に気づかない
●寝ているとき、腕が身体の下になっていても気づかない
●車椅子に座っているとき、麻痺側の腕が手すりから落ちてるのに気づかない
●感覚はあるのに、「膜を張ったような違和感」を感じる
感覚障害の症状・徴候は?
例えば脳卒中の患者で右肘より末梢の感覚障害がある場合、立位をとろうとして手すりをつかむことはできますが、感覚がないため他の動作に集中していると、つかんでいることを忘れ、バランスを崩してしまう場合があります。また、運動麻痺がなく動かすことは可能であっても、柵などを握った感覚がないため、力の加減がうまくいかないことがあります。
感覚障害は、 脳の障害だけでなくさまざまな原因から起こります。また、高次脳機能障害による注意障害や身体失認など、間違いやすい症状もあります。
患者の訴えや感覚障害の観察を行い、日常生活を安全に送れるように療養環境を整えていく必要があります。
感覚障害の事例
●排泄後に、急にうまく立てなくなった
●意識すればコップを持つことができるが、触っている感覚がない。意識がそれると急にコップを落としてしまう
事例が起こったのはなぜ?
■視床出血による“視床の障害”からくる感覚障害

①触覚:右上肢・右下肢の触覚障害
②痛覚:右上肢・右下肢の痛覚障害
③温度覚:右上肢・右下肢とも温度覚の障害
●感覚を司る経路に何らかの障害があり、急激に症状が出ていることから、脳からくる障害が考えられた
●CT画像により左視床出血がわかり、視床障害により、病巣と対側(右側)に、上下肢の半身の感覚障害が起こったとわかった
感覚障害のメカニズムと鑑別ポイント
1)感覚障害のメカニズム
第10回の記事で「感覚(温度覚・触覚)神経の伝達」について説明したように、感覚障害は、一次体性感覚野に知覚局在が存在します。また、運動系と同じように交叉するため、“左半身の感覚は右脳の視床を経由して”“右大脳の一次体性感覚野”へと感覚刺激が伝えられます。
なかでも視床は感覚に関係する経路がすべて通るため、出血などにより視床に障害を受けると、反対側の半身のすべての知覚障害が起こります(表1)。

2)感覚障害の分類
感覚障害には、感覚を感じない感覚脱失や、鈍く感じる感覚鈍麻、逆に感覚が強く感じられたりしびれたりする感覚異常などもあります。
3)特殊な感覚障害
特殊な感覚障害に、ワレンベルグ(Wallenberg)症候群があります。ワレンベルグ症候群は延髄の外側の障害によって起こります。
障害された部分と同じ側の顔面の温痛覚障害と、反対側の半身の温痛覚障害が起こり、顔面と、首から下の半身で温痛覚の感覚障害の出る場所が左右逆になるという、感覚解離が起きます(図1)。

また、ワレンベルグ症候群における感覚障害以外の症状として、障害された部分と同じ側の小脳失調症状、縮瞳や眼瞼下垂などのホルネル症候群、めまいや味覚障害や嚥下障害などを起こすことがあります(図2)。

●感覚障害が起こるメカニズム
感覚障害のメカニズムをイラストでわかりやすく紹介しています。
感覚障害の観察ポイント
1)感覚障害の観察
片麻痺のある脳卒中の患者で、麻痺側の足に傷がついていたり、腕に皮下出血があったりしたのを見たことがあるでしょうか。ベッドから車椅子へ移乗する際、麻痺側がフットレストに当たっても気づかず、傷を負ったりするためです。感覚障害の場合は外傷の有無などに患者自身も気づかないことがあり、注意が必要です。
また、脳卒中の危険因子に糖尿病がありますが、糖尿病による末梢神経障害のため、指先の感覚障害がみられることがあります。脳卒中が疑わしい場合の評価として感覚の程度を評価する項目がありますが、患者の“指先だけで”評価してしまうと「末梢神経障害」と「脳卒中の感覚障害」との判別を間違えてしまいます。感覚障害の場合、患者の「指先」「腕」「体幹」「大腿」「下腿」など、さまざまな場所に触れて評価することが大切です。
①触覚の観察
先の丸いもので患者の身体や四肢に触れ、触覚の有無、鈍い感じがないか、左右差や場所による違いがあるか、過敏になっているかどうかを判断します。
方法
●先端の丸いもの(ティッシュペーパーの先を細くしたものや指先)で患者の身体・四肢に触れる
評価
●触覚の有無、鈍さ、左右差、部位による違い、過敏

②痛覚の観察
痛覚は、先の尖ったもので上記と同じように患者の身体や四肢に触れ、痛覚の程度を評価していきます。痛覚の有無、鈍い感じがないか、左右差や場所による違いがあるか、過敏になっているかどうかを判断します。
方法
●先端の尖ったもの(つまようじなど)で患者の身体・四肢に触れる
評価
●痛覚の有無、鈍さ、左右差、部位による違い、過敏

③温度覚の観察
温度覚では、冷たいものや温かいもので、同じように評価していきます。
方法
●冷たいものや温かいもので患者の身体・四肢に触れる
評価
●温度覚の有無、鈍さ、左右差、部位による違い、過敏

2)意識障害の場合の観察
意識障害の場合では感覚障害の判別が難しく、痛み刺激中の表情の変化などで判断することがあります。
しかし判別が難しいからといって、何度も痛み刺激をするのではなく、そのときの意識障害の程度や痛み刺激の反応を判断し、看護記録に残すなどしていきましょう。
3)除外される疾患
感覚障害が両上肢のみや両下肢のみなどの場合(表1参照)などは、脊髄の障害(外傷・腫瘍・脊椎変性疾患、血管障害)などが考えられます。
感覚障害の対応ポイント
1)感覚障害の治療
感覚障害の場合も、運動麻痺と同じように、感覚障害を引き起こす根本的な疾患の治療が必要になります。原因疾患によって外科的治療や、消炎鎮痛薬やステロイド、ビタミンB12などの薬物療法などがあります。
このほかにも、障害され壊死した脳機能は戻らないため、リハビリテーションを行い、機能回復や生活動作自立に向けての訓練などを行います。
2)感覚障害への援助
①安全への配慮
脳の障害で起こる感覚障害では運動麻痺も伴うことが多く、転倒や外傷の危険があるため、日常生活に注意が必要です。
ベッドから車椅子への移乗の際は、麻痺側の上下肢の位置(身体の下敷きになっていないか、足底が床に着地しているか)など安全面に配慮が必要です。履きものについても、スリッパではなくシューズを用いるなどで対応します。
また、シャワー浴の際など熱いお湯に気づかないことがあり熱傷を招くため、介助する際は湯温の確認や、患者自身に健側で湯温の確認をしてもらうなどの説明が必要です。
②皮膚の観察
感覚脱失や痛覚障害などがあり、長期臥床中の場合、褥瘡を起こしても気づかず悪化することがあります。体の局所的な場所に圧が長時間かからない工夫や、全身状態の観察を行い、褥瘡・外傷などを早期に発見し、対応していきます。
③苦痛の緩和
感覚鈍麻や感覚異常の場合、皮膚の違和感やしびれ、疼痛を感じることがあります。また、視床の障害により、障害された側とは反対側の身体に耐え難い激しい疼痛を感じることがあります。
感覚異常に伴う苦痛が、精神的なストレスの増大や離床への意欲を減退させ、動かさないでいることによる廃用などが生じてきます。
患者の訴えに耳を傾け、苦痛を少しでも和らげるような援助が必要です。
(第12回)
- 1.窪田惺 監修,馬見塚勝郎 編:塗って覚えて理解する! 脳の神経・血管解剖,メディカ出版,大阪,2008:84.
- 1.三井良之,松村譲兒 監修:感覚.医療情報科学研究所 編,病気がみえる vol.7脳・神経,メディックメディア,東京,2011:188-198.
2.馬場元毅:知覚障害.JJNブックス 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版,医学書院,東京,2009:137-151.
※この記事は『エキスパートナース』2014年10月号特別付録を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。


