頭部外傷のうち、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫を画像で理解するための基本を解説。それぞれの鑑別のポイントや、画像を見てケアで予測すべきことなどを紹介します。
- ●頭部外傷とは
●硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像診断
●硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像の見方
1)急性硬膜外血腫
2)急性硬膜下血腫
3)慢性硬膜下血腫
●硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像を見てケアで予測したいこと
1)意識レベル等の変化を確認していく
2)脳ヘルニアの状態を確認しておく
●硬膜外血腫・硬膜下血腫の治療の進み方
・急性硬膜外血腫・急性硬膜下血腫の外科的治療・保存的治療
・慢性硬膜下血腫の治療(穿頭血腫洗浄ドレナージ、保存的治療)
・急性期の管理・ケア
・術前の管理・ケア
・術後の管理・ケア
・回復期の管理・ケア
頭部外傷とは
●頭部外傷は、“頭部に外力が加わり、皮膚・頭蓋骨・脳に損傷を生じた状態”のことを言います。
●頭部外傷の主な原因は交通事故や転倒・転落が多く報告され、近年では高齢化に伴う転倒・転落の事故が増加傾向であると言われています。令和6年度の厚生労働省「人口動態統計」のうち「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率」によれば、不慮の事故は45,689人で第7位となり、そのうち転倒・転落・墜落は11,912人にあたります1。
●頭部外傷は、損傷部位により種類や重症度が変わってきます。本項では、頭部外傷のなかでも「急性硬膜外血腫」「急性硬膜下血腫」「慢性硬膜下血腫」について、急性期の看護を中心に説明します。
硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像診断
頭部外傷が起こった場合、まず頭部CT検査が行われ、必要に応じて頭部X線検査が実施されます。
頭部CT検査では「頭蓋骨の骨折の有無」「頭蓋内出血の有無」「出血の部位」「脳の損傷の有無」を確認でき、頭部X線検査では「頭蓋骨の骨折の有無」を確認できます。特に、頭部CT検査は迅速・正確に脳と骨の評価ができるため、第一選択の検査です。
頭部外傷の場合、外傷を受けた側の脳に損傷を受ける直撃損傷(図1-①)と、外傷を受けた反対側の脳に損傷を受ける対側損傷があります(図1-②)。
図1 直撃損傷と対側損傷

通常、頭部を打撲すると、脳は受傷側へ移動し頭蓋骨に衝突し、同側の脳に損傷を受けます。次いで反対側の頭蓋骨と脳との間に陰圧が生じ、脳は反対側へ引き戻されるため、受傷側と反対側の頭蓋骨に衝突して脳や血管に損傷を受けます。
よって頭部外傷の頭部CT画像を見る際には、受傷部位の対側も注意深く観察する必要があります。
硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像の見かた
1)急性硬膜外血腫
急性硬膜外血腫は、頭部外傷により硬膜にある硬膜動脈が破れて出血し、頭蓋骨と硬膜の間に血腫ができたものです(図2-1)。
頭部CT画像では、外傷を受けた部位を中心とした凸レンズ型の高吸収域が見られるのが特徴です。
図2 急性硬膜外血腫(CT)

出血源は中硬膜動脈が多く、ほかにも椎間静脈の損傷等でも急性硬膜外血腫が生じやすいとされます。
受傷直後は脳震盪により意識障害が出現しやすいでしょう。その後、一時的に意識が回復する意識清明期を経ますが、徐々に血腫が増大し、脳幹が圧迫されるために再び意識障害が生じます。
そのほかにも、血腫増大により頭蓋骨の内側の圧が高まると、脳が圧迫され受傷部位と反対側の片麻痺や、硬膜や脳血管に存在する痛覚が刺激され頭痛が生じます。また、延髄にある嘔吐中枢が圧迫されることで悪心・嘔吐を生じることもあります。
図2の症例では血腫により脳が圧迫され、左上下肢麻痺が出現していました。
2)急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、頭部外傷により脳の表面にある動脈が破れて出血し、硬膜とくも膜の間に血腫ができたものです(図3)。
図3 急性硬膜下血腫

頭部CT画像では、脳表を覆うように三日月型の高吸収域が見られるのが特徴です。また、硬膜とくも膜の結合は弱く血腫が拡がりやすいため、血腫が大きいと脳が圧迫され、正中偏位(midline shift〈ミッドラインシフト〉)が見られることがあります。
出血源は脳表動脈が多く、ほかにも架橋静脈の損傷等でも、急性硬膜下血腫が生じやすいとされます。
損傷部位により頭蓋内圧亢進症状(頭痛 ・悪心 ・ 嘔吐)や脳損傷による麻痺や感覚障害などさまざまな症状がみられます。重篤である場合は、脳ヘルニア症状(瞳孔不同、異常肢位、異常呼吸など)が見られます。
また、脳自体が損傷している場合(脳挫傷)も多いため、受傷直後から意識清明期がなく意識障害が重度である場合が多いとされています。
図3の症例では血腫により頭蓋内圧が亢進し、頭痛・嘔吐が出現していました。
3)慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、通常、数週間前に軽度の頭部外傷を受けたことにより、硬膜とくも膜との間に出血がじわじわとたまり血腫ができたものです(図4)。頭部CT検査では、受傷直後では異常が認められないことが多くあります。
図4 慢性硬膜下血腫(CT)

慢性硬膜下血腫の画像は急性硬膜下血腫と同じように三日月型ですが、ゆっくりと血腫が固まるため、高吸収(白)~低吸収(黒)とさまざまな画像所見がみられます。また、正中偏位、脳室の圧排、脳溝の消失などが特徴的な所見です。
なお、慢性硬膜下血腫の血腫量が少ない場合や境界線がはっきりわからない場合は、頭部MRI検査を実施することにより、境界線をはっきりと確認することができます。
症状は、受傷直後には現れず、数週間経過してから血腫増加による頭蓋内圧亢進症状(頭痛・悪心・嘔吐)、片麻痺、尿失禁、認知障害などさまざまな症状がみられます。高齢者は加齢により脳が萎縮しているため、頭蓋内圧亢進症状は少なく、尿失禁、認知障害、片麻痺(歩行障害)などが起こりやすいとされています。
これらの症状は、認知症症状と間違えられやすいため病院に受診するまでに時間がかかってしまうことがあります。高齢者が数か月単位で認知症様の症状を認めた場合は、数週間前に転倒 ・ 転落歴がないか家族からも情報を得て、認知症、正常圧水頭症、脳梗塞などの疾患との鑑別をすることが重要です。
図4の症例では血腫により脳が圧迫され、尿失禁が出現していました。
以上の3つの病態について、画像上の特徴や症状を表1にまとめます。
表1 鑑別のポイント

●急性硬膜外血腫を疑って画像を見る際のポイント
転倒後意識障害が増悪した場合の画像の見かたについて解説しています。
硬膜外血腫・硬膜下血腫の画像を見てケアで予測したいこと
1)意識レベル等の変化を確認していく
急性硬膜外血腫は、初回のCT検査が受傷後早期に実施されると、“血腫が形成されていない場合”や、“血腫が少量の場合”があります。
『重症頭部外傷治療・管理のガイドライン』2では、受傷跡5時間以内で増大がみられ、神経症状の状態に合わせてCT検査が行われますが、通常、初回CT(図5-①)と受傷6時間後CT(図5-②)が、血腫量の変化を見るうえで重要といわれています2。
図5 血腫の増大の観察

したがって、初回のCT検査で血腫が少量であっても急激に増大する恐れがあるため、注意深く表2を観察する必要があります。
表2 観察のポイント
バイタルサイン
●血圧上昇
●徐脈
●呼吸回数・呼吸パターンの異常
神経症状
●意識レベル低下
●瞳孔の大きさ、左右差
●対光反射の有無
●運動麻痺
●頭痛・悪心・嘔吐
2)脳ヘルニアの状態を確認しておく
急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫は、血腫や脳浮腫により脳が圧迫され頭蓋内圧が亢進し、これが進行すると、脳が本来あるべき場所から押し出されてしまい脳ヘルニアを起こします(図6)。
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