抗がん薬投与時に注意すべき、過敏症とインフュージョンリアクション(IR)のメカニズムや投与前のアセスメント、予防・対応について解説! 『がん専門病院に学ぶ 簡単にわかる・現場で役立つ がん薬物療法看護 はじめてBOOK』の試し読み記事をお届けします。
●過敏症を起こしやすい抗がん薬や出現する症状、特徴などを事前に把握しておくことが重要である。
●インフュージョンリアクションは、投与開始~24時間以内に生じる分子標的治療薬による特有な有害反応をいう。
●患者のあいまいな表現にも注意して、初期症状を観察することが早期発見につながる。
発症のメカニズム
1 過敏症
過敏症とは、異物に対しての生体防御システムが不適切な反応として出現する炎症や組織障害の総称です。一般的に過敏症とアレルギーは同意義語に用いられますが、免疫的機序により起こる現象を「アレルギー」といいます。
急性で全身性反応を呈する反応を「アナフィラキシー」といい、なかでも血圧低下を伴う末梢循環不全による重篤な状態を「アナフィラキシーショック」と表現します。
2 インフュージョンリアクション(IR)
インフュージョンリアクション(IR)は、分子標的治療薬(抗体薬)の投与時に出現する輸注に伴う悪寒、発熱、頭痛などの症状であり、投与中または投与開始後24時間以内に現れる薬物有害反応です。
通常の過敏症と類似した症状もみられますが、分子標的治療薬である抗体薬特有の症状を引き起こすため、一般的な過敏症と区別されます。
発生のメカニズムとしては、マウス-ヒトキメラ抗体でマウスの異種タンパク部分が含まれていることや、急速な腫瘍細胞崩壊の過程で生じるサイトカインの産生、放出が関与していると推測されています。
【IR】
infusion reaction、インフュージョンリアクション。
【抗体薬】
生体がもつ免疫システムの主役である「抗体」を主成分とした医薬品。1つの抗体が1つの標的(抗原)だけを認識する特異性をもつ。
抗がん薬投与前のアセスメント
1 原因となりやすい薬剤
過敏症やIRを起こしやすい抗がん薬は、事前に把握しておく必要があります(表1・表2)。
抗がん薬による出現の特徴も、投与前にアセスメントする内容です。


2 具体的症状と特徴の把握
症状は多種多様ですが、具体的にどのような症状を引き起こすのか、事前に把握しておくことが大切です(表3)。

特に、他の抗がん薬との併用時には判別が困難な場合も多いですが、明確な判別ができないまま対症療法が実施されることもあります。一方で、くしゃみや「耳の奥がかゆい」「喉がいがらっぽくなった」などの特有の症状の訴えも聞かれます。
軽度のものからアナフィラキシーショックまで程度はさまざまですが、看護師が早期の症状を発見することで重篤化を予防することにつながります。
①過敏症
タキサン系抗がん薬(パクリタキセル、ドセタキセルなど):投与初回と2回目に過敏症を起こしやすく、投与直後に症状が出現しやすいです。
白金製剤(カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチンなど):投与回数が増えていくほど出現頻度が高まり、投与直後から投与終了までのどの時間帯においても出現します(表1)。
抗がん薬による過敏症出現の特徴を理解したうえで臨むことが、有効な症状のモニタリングやマネジメントにつながります。
3 患者のアセスメント
①過敏症
抗がん薬投与前には、患者の「アレルギー歴」や「過敏症」の有無を確認しておきます。
パクリタキセルにはアルコールが含有されているため、アルコール過敏の患者は過敏症が起こりやすくなり、観察を強化する有用な事前情報となります。
がん薬物療法歴のある患者は、前回までの投与時・投与中・投与後の過敏症の有無を確認します。前回までに、軽度であっても過敏症の症状を起こしている場合には、観察強化はもちろんのこと、予防薬や投与速度を調整する必要性があるため、医師・薬剤師の指示を確認する必要があります。
②インフュージョンリアクション
IRは、初回投与時や2回目に出現しやすいため、患者の投与回数を把握しておき、 表2に示した薬剤別の特徴をふまえておく必要があります。
リツキシマブやオビヌツズマブは、腫瘍量の多い患者の場合や投与速度の上昇タイミングなどで危険性が増します。また、維持療法を実施する場合は、投与期間をおいてから再投与する場合も多くあります。初回投与時の状況を、ふり返って把握しておくことも大切です。
トラスツズマブは、呼吸症状のある患者に危険性が増すため注意します。
看護ケア
1 予防ケア
①「過敏症」に対する前投薬の確認
過敏症が出現しやすい抗がん薬では、前投薬を投与して発症を予防することが多いです。一般的には、ステロイド、ヒスタミン H1受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬を経口または静脈注射(静注)で投与します。
抗がん薬投与の30分前までに投与するように準備し、確認します。静注の場合は、抗がん薬投与の30分前までに投与完了するようレジメンとして組み込まれていることが多く、順番に投与していきます。
●必ず前投薬が決まっている抗がん薬として、パクリタキセルが挙げられます。
●前投薬が経口薬の場合、飲ませ忘れのないよう、抗がん薬の投与開始30分前までに確実に服薬できるように管理します。
②「IR」に対する前投薬の確認
IRでは、薬剤により前投薬が必須の場合があります(表2)。
例えば、リツキシマブのIRの予防と軽減策としては、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェン)と抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)の前投薬が投与ごとに行われるよう定められています。リツキシマブを投与する30分前までの服用が原則であり、看護師の管理のもと確実に投与管理します。
③早期発見のための症状モニタリングとマネジメント
抗がん薬の投与中は、看護師による頻回の観察と同時に患者自身のモニタリングも重要です。
抗がん薬投与前後にバイタルサインを測定し、投与中は過敏症やIRが出現していないか、注意深く観察していきます(図1)。

●注入速度に関連して血圧下降、気管支けいれんなどを生じるリスクがあるので、リツキシマブのように一定時間で投与速度を上げる薬剤については、“投与速度を上げた時点”から再度15分くらい付き添って観察を強化します。
前投薬の影響で患者は投与中に眠気を強く感じます。眠っている様子であっても全身状態を観察することが大切です。
過敏症の症状は多種多様ですが、患者からのあいまいな表現の訴えに対しても注意を払い、過敏症の初期症状を観察することが早期発見につながります。
IRの症状は、過敏症と同様に多種多様ですが、前駆症状として患者からの「いつもと違う」「何だか変な感じ」などの訴えや、いつもみられない腹痛や悪心、しびれ感などを見逃さないことが大切です。
●「ほてるような症状はありませんか」「皮膚のかゆみは出ていませんか」など、がん薬物療法が初めての患者にもわかりやすい言葉で症状を確認しましょう。
●前駆症状(図1)を見逃さないことが大切です。
●くしゃみ、咳をするなどの行動から発見されることもあります。
④セルフケア支援
看護師によるモニタリングのほかに、患者自身がモニタリングすることで、より早期に症状を知ることができます。
●患者が理解していないと症状出現後に発見が遅れ、重症化する危険性につながります。
患者には過敏症やIRの危険性と具体的な症状、早期発見の重要性を説明し、ごく軽度の変化であっても看護師に報告するように説明します。
前投薬の影響で、治療中に眠気が出現することを説明し、眠っている状況でも看護師が観察していることを事前に伝えておきます。
●早期発見の重要性を十分に説明したつもりでも、「もう少し様子をみようと思った」「気のせいかと思った」など、患者は報告をためらったり、がまんしていたりする場合があります。事前に症状をがまんしないように説明し、定期的に声をかけることが大切です。
2 症状出現時の対応
過敏症やIR出現時は、すぐに抗がん薬の投与を中断します。
症状にあわせて対症療法を行います。
重篤なアナフィラキシーショックの場合は、救急蘇生法に則った対処が必要になるので、必要となる薬剤と物品は常に使用できるように準備し、スタッフ全員が日常点検を行います(表4)。通常は救急カートに一揃えになっています。発見者は、患者のそばを離れずにナースコールなどで他のスタッフの応援を呼び、急変を伝えます。

過敏症急変時に備え、実際的なケースを想定したシミュレーション訓練を定期的に行い、実践
できるようにしておきます。
過敏症やIRが出現した場合は、CTCAE(表5)を用いて、症状の程度を把握し、記録します。記録は多職種の共通解釈のツールとして有用な情報になります。

3 症状改善後の対応
外来治療の場合は、症状が改善して医師の帰宅許可のもと帰宅します。帰宅後に症状が再燃した場合は、病院へ連絡するように指導します。
過敏症やIRの症状が軽症(おおむね Grade 1、2)の場合は、改善後に同じ抗がん薬を再投与する場合があります。再投与する場合は、患者に付き添い、頻回のバイタルサインの測定と注意深い全身状態の観察を行います。
同じ抗がん薬を再投与する場合は、投与速度を変更する場合が多いため、医師の指示内容を確認して慎重に投与します。
4 心理的支援
患者は過敏症やIRが出現すると、もっと症状が重くなるのではないか、過敏症によりがん薬物療法の継続ができないのではないかと、さまざまな不安を抱くことがあります。患者の不安感を察知して、心理的な支援につなげることも看護師の重要な役割です。
過敏症やIRの重症度により、他の抗がん薬に変更となる場合もあります。治療変更による患者の動揺を確認しながら、説明を進めるなど配慮します。
●症状の改善後に再投与する際は、同じ症状が出る可能性も高く、患者は恐怖感を覚えます。必ず“再投与時には医師・看護師が付き添って投与する” ことを伝えて、不安感を緩和します。
- 1)関野礼子:インフュージョンリアクション.がん看護 2009;14(78):225.
2)小澤桂子:過敏症.濱口恵子,本山清美編,がん化学療法ケアガイド 第3版,中山書店,東京,2020:146-154.
3)木暮友穀:アレルギー反応,infusion reaction.遠藤一司監修,がん薬物療法の支持療法マニュアル-症状の見分け方から治療まで,南江堂,東京,2013:97.
4)日本臨床腫瘍研究グループ:有害事象共通用語規準 v6.0 日本語訳 JCOG 版.
https://jcog.jp/assets/CTCAEv6J_20251001.pdf(2026.1.10. アクセス)
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がん専門病院に学ぶ 簡単にわかる・現場で役立つ
がん薬物療法看護 はじめてBOOK
鈴木美穂、山口正和、羽田 忍 編著
B5・224ページ
定価:2,970円(税込)
照林社
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