「映像化は不可能」と話題になった現役医師による小説『廃用身(はいようしん)』が、染谷将太さん主演で映画化。本日5月15日に公開されました。“画期的”なデイケアを行うクリニックを舞台にした、ヒューマンサスペンスです。

「不要な手足を切断」倫理観を揺さぶる禁断の治療

 原作は、外務省医務官を経て、現在も在宅訪問医として活躍する久坂部羊(くさかべ・よう)さんの小説デビュー作『廃用身』。患者から「切って楽になれるなら切ってほしい」との言葉を聞くなど、著者自身の経験から生まれた作品です。

廃用身:場面写真1
©2025 N.R.E.

 デイケア施設「異人坂クリニック」で広まっているという“画期的”な治療「Aケア」。漆原院長(演:染谷将太さん)が考案したこの「Aケア」は、「廃用身」(麻痺などにより、回復見込みがない手足)を切断するという、従来の常識を覆すもので――。

 「廃用身」切断の1例目は、3年前に脳梗塞を患い、両脚と左腕に麻痺がある岩上(演:六平直政さん)。妻や息子からは介護を放棄され、褥瘡の悪化により左脚は感染症を起こし、敗血症になる寸前に。
 漆原院長は、看護師や介護士、理学療法士と話し合ったうえで、本人や家族にまずは左脚、ゆくゆくは右脚と左腕の切断を提案します。

廃用身:場面写真2
©2025 N.R.E.

 手術の後、「後悔はしていない」「残った右腕を使って人生を楽しもうと思う」と晴れ晴れした様子で語る岩上を見て、感化されるほかの患者たち。その後も「廃用身」を切断することで、不思議と「身体も心も軽くなった」「厳しい性格が柔らかくなった」といった効果がみられる患者が続きます。

 そんな噂を聞きつけたのが、編集者の矢倉(演:北村有起哉さん)。漆原院長に本の出版を持ちかけますが、やがて「Aケア」に関する内部告発が週刊誌で報道され、さらにある事件が起きたことで状況は一変し……。

廃用身:場面写真3
©2025 N.R.E.

「1人の医師の、1つの症例のような人生」

 「医療は科学ではなくサービスだと考えています」と語り、理想を追うあまり合理性と狂気のはざまへと踏み込んでいく主人公・漆原院長を演じるのは、染谷将太さん。
 染谷さんは、「正義と悪は曖昧なものだということはさまざまな作品で語られてきました。しかしこのような切り口から描かれ、世に投げかける作品はなかったのではないでしょうか? 1人の医師の、1つの症例のような人生を、皆様に目撃してほしいです」とコメントを寄せています。

 劇中で目を引くのが、看護師・内野(演:中井友望さん)。スタッフのミーティング中に「私ちょっと怖いです」「想像すると恐ろしい」と発言するほか、Aケアが賞賛されるなかでも漆原院長に懐疑的な視線を送り続けます。

廃用身:場面写真4
©2025 N.R.E.

 漆原院長に熱心に執筆を勧める矢倉は、寝たきりで意思疎通のできない母と、老老介護に疲弊した父がいるという役どころ。この家庭事情は、映画化にあたり追加されたとのこと。矢倉が編集者としてだけではなく、自身の立場からもAケアに希望を見いだしている様子が伝わってきます。

 また、「実際の現場を知っている人にも裏切りのない映画にしたい」との監督の思いから、クリニックのスタッフ役には、看護師や介護士、理学療法士の資格をもつ俳優、介護経験のある俳優を積極的に探したそう。手術シーンも、染谷さんと執刀医役の吉岡睦雄さん以外は、医療監修者などを含めた医療従事者が担当しています。

 Aケアは残酷なのか、それとも究極の“コスパのよい介護”なのか――。超高齢社会に生きる誰もに問いを突きつける作品です。

『廃用身』
2026年5月15日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

原作:久坂部羊『廃用身』(幻冬舎文庫)
監督・脚本:吉田光希
出演:染谷将太 / 北村有起哉 瀧内公美 廣末哲万 中村映里子 中井友望 吉岡睦雄 / 六平直政
音楽:世武裕子
配給:アークエンタテインメント
©2025 N.R.E.
公式サイト:https://haiyoshin.com/
公式X:@Haiyoshin_movie
公式Instagram:@Haiyoshin_movie

廃用身ポスター
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