この特集では、カリウム製剤は危険なのかをあらためて解説。そのほか、注意しておきたいハイリスク薬についても、注意点や使う際のポイントをわかりやすく紹介します。

 第1回では、カリウムの生体での役割をおさらいしましょう。

細胞のはたらきは、イオンの出入りによって調整されている

 カリウムは体液を構成する主要な成分であり、その役割を理解するためには、細胞レベルで考える必要があります。

 カリウムは、ナトリウムやカルシウムなどと同様にミネラルの1種で、電解質と呼ばれます。電解質とは、水に溶けるとプラスの電荷をもつ陽イオンやマイナスの電荷をもつ陰イオンを生じる物質です。イオンとなった各電解質が細胞膜にあるイオンチャネルを介して細胞内に入ったり、細胞外に出たりすることで、細胞のはたらきが調整されています(図1)。

図1 イオンによる細胞のはたらきの調整
イオンによる細胞のはたらきの調整

カリウムイオンの濃度差によって、細胞の安定状態が維持される

 細胞の内外には、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)など、さまざまなイオンがそれぞれ異なる濃度で存在しています。

 本項で扱うカリウムは、生体内ではカリウムイオンとして細胞内液および細胞外液中に存在しています。カリウムイオンの濃度は細胞内外で大きな違いがあり、細胞内で高く、細胞外では低く保たれています図2)。

 カリウムのはたらきを一言で表せば、「細胞膜の安定時の膜電位(静止膜電位)を生成して保つ」となります。膜電位、静止膜電位については後述しますが、静止膜電位が一定に保たれているからこそ、神経細胞は刺激を伝えるべきときに興奮でき、筋細胞は収縮すべきときに収縮できるといった生体の基本的なはたらきが可能になるのです。

図2 カリウムイオンの細胞内外での濃度差
カリウムイオンの細胞内外での濃度差

心拍を安定に保つためにカリウムが重要

 心臓においては、心筋細胞の収縮も前述の通りイオンの移動によって生じます

 細胞膜の内外にはさまざまな種類のイオンが存在しますが、安定時にはカリウムイオンだけを通すチャネルを通してイオン濃度の高い細胞内から濃度の低い細胞外に向かってカリウムイオンが移動します。

 カリウムイオンは陽イオンでプラスの電荷をもっているため、これと釣り合う電位が細胞膜を挟んで発生し、結果的に細胞内部は細胞外部に対して-90mV程度の電位をとります。これが静止膜電位です(図3)。

図3 安定状態の細胞膜の状態(静止膜電位)
安定状態の細胞膜の状態(静止膜電位)

脱分極と再分極

 神経細胞や筋細胞が興奮すると膜電位がプラス方向に変化して、隣接する細胞に伝わります。心室筋細胞に刺激が到達して膜電位が-60mV程度まで浅くなると、細胞膜にあって通常は閉じているナトリウムチャネルが電位に応じて開き、細胞外部からナトリウムイオンが流入し、膜電位はプラスに逆転します。これが脱分極であり、脱分極を引き起こすきっかけとなる膜電位を閾膜電位と呼びます(図4- 1)。

 ナトリウムチャネルはすぐに閉じますが、引き続きカルシウムチャネルが開いてカルシウムイオンの流入が起こり、心筋が収縮します(図4-2)。その後、カリウムチャネルが開いてカリウムイオンが細胞外に流出して、膜電位は平常状態に戻ります。これを再分極といいます(図4- 3)。

 このような一連の変化が一定のリズムで繰り返し起きることによって、心拍が保たれているわけです。

図4 興奮時の細胞膜の電位変化
興奮時の細胞膜の電位変化
1.Costanzo LS著,岡田忠,菅屋潤壹監訳:コスタンゾ明解生理学.エルゼビア・ジャパン,東京,2007.
2.小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫,他編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014.

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この記事は『エキスパートナース』2018年8月号特集を再構成したものです。
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