医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回は投与経路を間違えると重大な事故が起こる、トロンビン液について。静脈への投与が禁忌である理由や注意点を紹介します。

 投与経路を間違えると重大な事故が起きる薬剤。事故を防ぐためにも、薬剤を準備(調剤)するときと投与する直前の「6R」の確認が重要です。代表的な事例と一緒に、注意ポイントを示します。

トロンビン液の血管内投与の危険性とは?

 トロンビン液は、通常の結紮によって止血困難な小血管、毛細血管および実質臓器からの出血(外傷に伴う出血、手術中の出血など)に用いられます。トロンビン液には血液を凝固させる作用があり、血管内に投与すると血栓ができるため、きわめて危険です。そのため静脈への投与は禁忌です。

 事例①では、輸液ルートに金属針や専用のカニューラを必要としないルアータイプのシリンジが接続できるポートを使用していたことも原因の1つでした(図1)。

 トロンビン液ソフトボトルのノズルの形状は内視鏡の鉗子口に接続できる構造のため、物理的には輸液セットにも接続可能となっています。そのためポートにも接続でき、そのまま投与されてしまいました。

 形状や薬剤のラベルだけで判断するのではなく、「医師の指示に立ち返り再度確認」することが重要です。

事例① 経口用トロンビン液を血管内投与した事例1

●内視鏡処置後の患者さんに対し、止血を目的にトロンビン液5,000単位を経口投与する指示が出ていた。
●看護師は、冷所保存されていたトロンビン液ソフトボトルを内服用の薬袋から取り出す際、トロンビン液が経口薬であることを知らず、ボトルの「禁注射」の記載を見て、トロンビン液を注射器に吸い取って静脈注射することが「禁」だと解釈←ボトルの表記の意味を取り違えた
●その後、指示などを確認しないままボトルを輸液ルートの側管に接続し、静脈注射。
●投与後から輸液の滴下不良。刺入部の発赤・腫脹がみられた。
●患者さんは吐き気を訴え、左上肢から肩・背部にかけての疼痛、気分不良となったが、幸いにも重症化せず軽快。

図1 トロンビン液(例として、トロンビン液モチダソフトボトル5千)
トロンビン液の製品例と注意点
(画像提供:持田製薬株式会社)
1. 公益財団法人医療機能評価機構:医療事故情報収集事業事例検索.
https://www.med-safe.jp/mpsearch/SearchReport.action(2024.2.10アクセス)
1. 公益財団法人日本医療機能評価機構:医療安全情報 No.101 2015年4月.
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_101.pdf(2024.2.10アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2018年8月号特集を再構成したものです。
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