リハを「練習」でなく、「復活」の足がかりとして機能させるために

図2 “ちょっと”の工夫で患者さんの生活が広がる

 図2で提示したのは、軽い左片麻痺のある患者さんです。今回、左の躯幹に帯状疱疹ができて皮膚科に入院しました。

 痛みがあるため、臥床して過ごすことが多くなることから、廃用予防の目的でリハの依頼が出ました。この患者さんは訓練室では一生懸命に歩行訓練を行うものの、 病室に戻ればじっと寝ている状態です。

 この患者さんのベッドは左側から起きるような配置になっていたため、左片麻痺と帯状疱疹の痛みがある患者さんでは起き上がることができず、身動きすらできない状態で過ごしていました(図2・左)。

 それに気づいたスタッフはベッドを少しだけ左側に動かしました。こうすると患者さんは、いつでも右側に起き上がれるようになりました(図2・右)。起き上がって座位をとることができるようになり、そこから杖をついてトイレまで移動できるようになりました。こうして、患者さんの生活の幅は大きく広がりました。

 訓練室で歩行や立ち上がりなどが「できる」ということは大切ですが、じつは「できる動作」よりも「している行為」が生活をつくっていくのです。ベッドの向きひとつを例にとっても、患者さんに与える影響は非常に大きなものがあります。

 看護師が、環境を調整し、患者さん自身の行う「生活行為」を保障することは大切です。そこでの“ちょっとした配慮”が患者さんの生活を広げていくのです。 次回から具体的なかかわり方を紹介します。これらを参考に、病棟看護師ならではのリハを展開していただければと願っています。

1.小山珠美:経口摂取標準化ガイド̶脳損傷に伴う摂食 ・嚥下障害.日総研出版,愛知,2006.
2.西尾正輝:摂食嚥下障害の患者さんと家族のために,改訂第3版.インテルナ出版,東京,2008.
3.稲川利光 編:ナーシングケアQ&A 病棟でできるリハビリテーションの基礎知識Q&A.総合医学社,東京,2013.

ケアのついでにちょっとリハ【第2回】更衣でできる!

この記事は『エキスパートナース』2013年9月号特集を再構成したものです。
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