周術期に起こった Aくんの変化
1日の中で、“がんばること”と“遊び・学校の時間”を区別することで、「学校に行きたい」という発言が多く聞かれるようになりました。
また、看護師のことは名前で呼ばなくてもCCSであるBさんの名前は覚えて、「Bさん、いる?」「Bさんと遊びたい」と言うようになりました。
検査の帰りに散歩を促しても、「学校に行きたいから早く病棟に帰る」と言うこともありました。CCSと院内学級がAくんにとって安心できる対象となりつつあると考えられました。
一方、バクタの内服については、変わらずできないことが多いまま手術を迎え、内服そのものが中止となる時期に入ってしまいました。
Aくんは手術についての具体的な説明やプレパレーション(心の準備に対する支援)に対しても拒否を示し、「話なんて聞きたくない」と布団にくるまっていました。
このとき、母親から「直接話しかけても聞かないけれど、大人どうしの話は聞いているから、先生や看護師さんから私(母親)に話してもらうのを、隣で聞いている、という感じにすればいいかも」という提案があり、その形でAくんに手術の説明を行いました。
術後はICUで数日過ごしましたが、CCSと遊ぶ時間を楽しみにしており、ドレーンや点滴の扱いを大切にして、処置にも応じていました。胸腔ドレーン抜去後に、「これは嫌だった」と気持ちを冷静に言葉にすることもありました。自分の感情を暴力ではなく、言葉で表現できるようになってきたことは、Aくんにとって大きな成長でした。
術後、バクタ内服が再開されたときは、「こいつ(ゲーム上のキャラクター)を倒したら、バクタ飲む」と、自ら内服に取り組む姿勢を見せるようになっていきました。
処置の際に暴れて嫌がることは続きましたが、処置後のごほうびのコイン(CCSが折り紙で手作りしたもの)を集めて喜び、自慢げに「こんなに集まった!」と看護師に見せる姿もありました。
そのほか、精神科医師の助言のもと、かかわりの枠組みを定める(連日注射があるときは毎日決まった時刻に行う、処置の際に暴れたりものを投げたりするときはそれに看護師がリアクションせずAくん1人にしてクールダウンの時間を作る、など)ことで、Aくんは、予定された治療を完遂することができました。
共有したいケア実践事例【第15回】内服を嫌がる6歳の患者さんの事例をめぐるQ&A
この記事は『エキスパートナース』2016年5月号特集を再構成したものです。
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