Aさんに現れた変化と、今後への視点
出会った当初、Aさんは「入院しなければよかった」と後悔の念を抱き、訪室のたびに不満ばかり言葉にしていました。
しかし、1人でも安全に行動できる範囲を確保することができるようになると、自室や廊下で、穏やかな表情で車椅子で自走している姿を見かけるようになりました。
訪室すると、Aさんからは摂食角度の工夫や嚥下食についての質問がありました。
また、話をするなかで、今後の胃瘻造設についての質問なども聞かれるようになりました。進行性核上性麻痺の進行を自覚し、以前より胃瘻造設についての説明を医師より受けていたことから、「そんなときが近づいてきているとも思っている。先生に勧められれば作るべきなのか悩んでいる」と、経口摂取ができなくなった場合について、本人なりに考えていることを教えていただきました。
Aさんの肺炎は改善し、ADL、摂食条件も入院前とほとんど変わりない状況まで回復され、自宅退院となりました。 退院後2年の経過のなかでは、構音障害、嚥下障害の進行が認められており、発語が聞き取りにくくコミュニケーションが難しくなりつつありますが、思いを汲み取りながら、Aさんの価値観を尊重した支援を継続して行っています。
共有したいケア実践事例【第18回】ケアを拒んでいるように見えた進行性核上性麻痺の患者さんの事例をめぐるQ&A
この記事は『エキスパートナース』2016年6月号特集を再構成したものです。
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