皆さんが看護師として、日々行っている臨床現場での「実践」。それらは、どんな“気づき”をきっかけとして起こるのでしょうか?また、“患者さんの力”をどう引き出すのでしょうか?
 事例紹介をもとに、看護介入をナラティブに伝えます。

心不全患者さんの看取りの場面で「その人らしさ」を尊重して支援できること

 60代男性患者のAさん。独居で、遠方に兄家族がいます。
 2007年に急性心筋梗塞を発症し、広範囲前壁梗塞でIABP(大動脈内バルーンパンピング)装着のもとPTCA(経皮的冠状動脈形成術)を施行しました。退院時の左室駆出率は25%程度で、重度の左室機能不全がありました。

 外来で定期検査と内服調整をしていましたが、徐々に心拡大と左室駆出率の低下を認め、心拍出量症候群および心不全でCCUに入室しました。

心不全により死を意識したAさんの思い

 CCUでは、肺動脈カテーテルを挿入し、強心薬と肺血管抵抗を下げるための硝酸薬が開始になりました。

 入室2日目、受け持ち看護師からAさんが死を察知していること、家族とは疎遠であり今後の意思決定をどうすればよいか悩んでいることについて、私に相談がありました。

 Aさんは、「私が生きることで迷惑をかけ、人がつらい思いをしてしまうことになるのならば死んだほうがいいのではと思います。よくなるのであれば治療は受けたいと思います」と言いました。

 主治医と受け持ち看護師、私は対応について検討し、まずは主治医に電話で兄家族へ病状説明をしてもらうとともに、“来院は可能か”“どこまでサポートができるのか”を確認してもらいました。
 兄家族からは、“来院はできない”“医師がよいと思うことをしてほしい、可能な限り患者の意思を尊重してほしい”“いつでも連絡はしてよい”という返事がありました。

 また、Aさんはスピリチュアルペインを抱えており、看護師は苦悩に寄り添う必要があることを確認し、実践しました。