患者さんが家族と過ごす最期の時間:看取りのケア
主治医から兄家族に、死期が差し迫っているため、可能な限り早く来院してもらうように連絡をしました。兄家族の来院後、Aさんは会話をすることはできませんでしたが、個室の病室で一緒に過ごすことができました。
主治医から、兄家族は仕事の都合があり、長くても月曜日に帰るつもりであること、肺動脈カテーテルから滲出液が多量に出ており抜去のタイミングを考えないといけないことについて、私に相談がありました。抜去すれば同時に薬剤をすべて止めるつもりであるが、その選択をしてもよいのかという相談でした。
家族の同意があれば、それは可能であることを伝えました。兄家族に状況を説明し同意が得られたため、肺動脈カテーテルは抜去しました。
私は病室内で過ごしている兄家族と話をしました。Aさんは天涯孤独と思っていたようですが、兄家族はいつでも帰ってきていいと話していたこと、前年の夏にはAさんが遊びに行き、とても楽しく過ごしていたことを教えてもらいました。
私は兄家族に遠方から来院してAさんと過ごしてくれていることに感謝の気持ちを述べ、Aさんもとてもうれしがっているであろうと伝えました。
また、Aさんのことについて他愛もない会話をし、兄家族がAさんと穏やかな気持ちで接することができるように、場の空気をつくるようにしました。
兄家族から“小康状態であれば一度帰りたい”という申し出がありましたが、主治医と検討をし、採血結果で判断することにしました。
著明なアシドーシスの進行を認めていたため、そのまま待機してもらうと、間もなく呼吸が停止し、血圧が下がるとともに心拍も停止しました。
兄はその際「一緒に帰ろうな。もう何も考えなくてもいいから、一緒に帰ろう」と声をかけていました。私たちは兄家族が見守るなかで、死亡確認をしました。
心不全患者さんの看取りの場面での「その人らしさ」を尊重した支援をめぐるQ&A【共有したいケア実践事例:第39回】(2025年1月1日配信予定)
この記事は『エキスパートナース』2017年1月号特集を再構成したものです。
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