輸血の指示が出たとき、“何を確認して”“どこに注意して”“どう動くべき”なのでしょうか。注意したいポイントをQ&Aでわかりやすく解説します。

Q. なぜ、血液型検査と交差適合試験(クロスマッチ)の検体を同時に採血してはいけない?

Answer
●同時に採血すると、患者さんの検体の取り違えがあっても気づけない
●別に採血していれば、2つの結果から“血液型が一致しないのはおかしい”と検体の間違いに気づくことができる

血液を分注して提出は×。どうして?

 輸血を行う際には事前に輸血検査として、血液型検査交差適合試験(クロスマッチ)があります(図1)。

図1 輸血検査までの流れ
図1 輸血検査までの流れ

 医師から輸血検査の指示が出されたので、採血した血液を「血液型検査」と「交差適合試験(クロスマッチ)」の採血管に“分注して”輸血検査室へ提出したところ、検査技師から「『血液型検査』と『交差適合試験』の同時採血はダメです。『血液型検査』の検体をもう一度採血して提出してください」と言われて、「え? どうして?」と疑問に思ったことがある人もいるかもしれません。

 なぜ、「血液型検査」と「交差適合試験」の検体を同時に採血してはいけないのでしょうか?

同時採血では“取り違え”に気づけない

 皆さんはこんな調査報告を知っていますか?
 一定量以上の輸血を実施している病院を対象に行われた、ABO不適合輸血の有無についての匿名のアンケート調査で、多くのABO不適合輸血が発生していたことがわかりました(表11

表1 ABO型不適合輸血実態調査
(文献1より引用、一部改変)

 表1を見ると、看護師が当事者としてかかわった不適合輸血の原因に「患者検体の取り違え」と「患者の取り違え」があることがわかります。

 「患者検体の取り違え」が発生すると、輸血を受ける患者さんとは異なる別の患者さんの検体で血液型検査が行われ、誤った(他人の)血液型の結果が報告されてしまいます。

 さらに「血液型検査」と「交差適合試験」の検体を“同時に”採血し提出されると、患者さんの血液型とは異なる別の患者さんの血液型で輸血が準備されて実施となってしまいます(図2-①)。

図2 「同時」採血と「別々」に採血した場合
図2 「同時」採血と「別々」に採血した場合

別に採血しておけば、血液型の不一致で気づく

 しかし「血液型検査」と「交差適合試験」の検体を“別に”採血していれば、万一、血液型の検体の間違いがあっても、別に採血された交差適合試験の結果から“血液型の検査結果と交差適合試験の血液型が一致しないからおかしい”と検体の間違いに気づくことができます(図2-②)。

 これが、「血液型検査」と「交差適合試験」の検体を同時に採血してはいけない理由なのです。

 よって「血液型検査」の検体提出後、「血液型検査」の結果が判明してから、改めて「交差適合試験」の採血をし、検体を提出するのです。

1. 柴田洋一,稲葉頌一,内川誠,他:ABO型不適合輸血実態調査の結果報告. 日本輸血細胞治療学会誌 2000;46(6):545-564.
1. 日本赤十字社・医薬品情報:輸血の実施.
http://www.jrc.or.jp/mr/transfusion/(2024.4.9アクセス)

輸血業務のつまずきQ&A【第2回】「輸血製剤を受け取るとき」「輸血を実施するとき」、何を確認する必要がある?

この記事は『エキスパートナース』2017年12月号特集を再構成したものです。
当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。