PTとOTが行っている、患者さんへの実際のアプローチ

 今回のように介助に拒否のある患者さんでは、介助によって動作時の痛みが助長されることがその原因になっていることがあります。PTは動作の専門家として、動きのなかで「いつ、どのように痛みが生じているか」も観察しています。そこから、痛みが生じにくいような触れ方や声かけの方法も検討しています。

 例えば、立ち上がりでズボンを引き上げるとき股に食い込んでしまうと不快感がありますが、ズボン全体でお尻を包み込むように引き上げると、不快感は減ります。また、立位保持のときに指先で腋窩(えきか)を支えると痛みが生じやすいので、手のひらで包むように支えて接触面積が大きくなるようにします。ささいなことのようですが、介助される側にとっては大きな違いです。

 OTは生活にかかわる専門家として、生活全体を見て状況を考えます。介助の介入を拒否している患者さんも、すべての活動を拒否するわけではなく、活動内容や時間帯、状況によって反応は変化します。

 拒否するか否かの判断には、環境やその人の習慣なども影響しますが、なかでもその人の興味・関心や価値観が重要です。そこで作業療法では、患者さんの興味・関心を「観察だけ」でとらえる意志質問紙(VQ:volitional questionnaire)を用います。VQはさまざまな場面、状況を観察し、そこで観察された行動から意志をくみとるものです。

 例えば、早朝・食後・日中などの時間帯、声かけの仕方、活動別などにVQを測定して比較することで、患者さんが興味を示しやすい状況をとらえます。こうしたツールを用いることで、患者さんにとって受け入れやすい状況を理解することができます。

 また、拒否されずに介入できた場合にも過干渉せずに、できる限り患者さん自身で動作を行ってもらい、小さな失敗を経験してもらうことも心がけています。これは必要最低限の介助箇所を把握する意味と、患者さん自身にも身体に触れて介助する必要があることを認識してもらう意味があります。
 患者さん自身がさらに動作に挑戦したいというときは、リスクを十分に説明したうえで、できる限り応えるようにしています。

PTとOTが実践していることでナースができること

 痛みの評価ツールにはNRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)などがあります。これらは日々の患者さんとのかかわりのなかでも簡易にチェックができるので、痛みの変化を追うためにもぜひ活用してみてください。介助方法を変えることによって痛みの程度が変化してくるのがわかると、それだけで日々の介助への意識づけが変わってきます

 そして、そこで得られた情報をリハスタッフと共有して、さらによい介助ができないかを検討していきましょう。ついつい、「看護場面だから……」「私の介助が下手だから……」という理由で情報共有することをためらってしまうものですが、知らないことを知ってもらえるチャンスだと思って声をかけてみてください。

 OTが行うかかわりは、どれもナースが行えるものです。ナースは、時間的余裕は少ないかもしれませんが、患者さんと何度もかかわる機会があります。もし時間をつくることができれば、OTと同じように「患者さんがどのように行動したいか」を聴取し、それに合わせた介助方法を一緒に決めていくこともできると思います。ですが、実際の現場ではそこまで行うことは難しいので、患者さんごとにリハスタッフにかかわり方を尋ねて、共有していきましょう。

 反対に、リハスタッフはナースとの情報共有を通して、本来であれば時間をかけて何度もかかわることでわかるような患者さんの問題を知ることができるので、より病棟での生活が過ごしやすくなるよう検討していくことができます。誰にでも効く万能なコツはなかなかありませんが、お互いにひと言声をかけ合う多職種連携は、何かを変えるヒントになるかもしれません。

1.da las Halas CG,Geist R,Kielhofner G,山田孝訳:意志質問紙法(VQ)改訂第 4 版使用者手引書.日本作業行動学会,東京,2009.

この記事は『エキスパートナース』2022年3月号連載を再構成したものです。
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