新型コロナウイルスを事実に基づく物語として、オリジナル脚本で映画化した『フロントライン』が6月13日(金)より全国公開となります。そのキックオフイベントとして、日本体育大学にて、約350人が在籍する救急医療学科の生徒を対象にした特別試写会を開催。俳優の小栗旬さん、窪塚洋介さんがサプライズ登壇しました。イベントの様子をレポートします!

映画『フロントライン』あらすじ
物語の舞台は、2020年2月3日に横浜港に入港し、その後日本で初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客乗員は世界56か国の3,711人。横浜入港後の健康診断と有症状者の検体採取により10人の感染者が確認されたことで、日本がはじめて治療法不明の未知のウイルスに直面することとなった。この状況下で<最前線> に駆けつけたのは、家族を残し、安全な日常を捨てて「命」を救うことを最優先にした医師や看護師たちだった――。

モデルとなった医師が見た『フロントライン』

 4月10日に行われたキックオフイベントは、関係者やマスコミ向けを除いてははじめてとなる試写会。上映後、まずは、小栗さんと窪塚さんが演じるDMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)の隊員のモデルとなった阿南英明先生(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 理事長)、近藤久禎先生(DMAT事務局次長)、そして映画の企画・脚本を担当した増本淳プロデューサーが登壇しました。

フロントライン集合写真
左から増本プロデューサー、阿南先生、小栗さん、窪塚さん、近藤先生

 映画の感想を聞かれると、阿南先生は、「事実に基づいてつくり上げていただいたなと感じます。個々には脚色もありますが、船の中や外で本当にあったことを積み上げています。僕は4回泣きました」、近藤先生は、「家族対応などできたことを思い出した一方で、マスコミ対応を含めてこれからの課題をあらためて感じました」とのこと。
 増本プロデューサーは、「取材時はコロナ禍だったため、ずっとパソコン画面越し。お2人には、撮影直前にようやくお会いできました。いま一緒にこの場に立てて光栄です」と述べたうえで、企画の経緯について、「『THE DAYS』(Netflixオリジナルドラマ)を撮っていたとき、10日後くらいで新型コロナウイルスの影響で撮影が中止に。どうしたら安全に撮影できるのかを専門の先生に尋ねたんです。その先生から阿南先生たちを紹介されて。話をするなかで、ダイヤモンド・プリンセス号についても聞き、僕が報道で知っていたこととだいぶ違うなと思いました。これは何らかの形で世の中の人に伝えたら意味があると思ったのがきっかけです」と話しました。

増本プロデューサー

 DMATに関しては、近藤先生が「今年で発足から20年。被災地の都道府県などからの要請に基づいて、個々の医療機関からチームが派遣されます。出動するのは、DMATに登録しトレーニングを受けている医師や看護師など。被災地でがんばっている医療従事者の方を助ける、そのためなら何でもやるという組織です」と説明。

 阿南先生はDMATで活動するうえで大切にしていることについて、「災害が起きたときに動くので、私たちが何をしたいかではなく、被災現場での困りごとに対応します。困りごとを一瞬で拾い上げて、支援の形を構築して実施することを心がけていますね。船の中は自然災害とは異質の部分がありますが、本当に困っている人がいる、では私たちは何をすべきなのか、そういうこと考えていました」と話します。

阿南先生
近藤先生

芝居、セットの再現度の高さに驚き

 阿南先生をモデルとした結城英晴役は小栗さん、近藤先生をモデルとした仙道行義役は窪塚さんが担当。この配役について尋ねられた増本プロデューサーは、「本作を観たDMATの皆さんから『阿南先生と近藤先生がかっこよすぎ!』という指摘もいただいたんですよ。でも、取材を通して僕が見たお2人は本当にかっこよかったんですよね。すてきだなと思ったお2人の共通の言葉が、『やれることは全部やる』。批判を恐れず困っている人のために厳しい状況に立ち向かっていく役をお願いするなら、小栗旬と窪塚洋介なんじゃないかなと思ってオファーしました」と答えました。

 小栗さんの印象を聞かれると、阿南先生は「まず背が高くて顔が小さくて、かっこいいんですよね。演技にはぐいっと入り込んで、声をかけられないくらい集中されていて、それが魅力的。小栗さんが劇中で使っていた聴診器は僕のものなんですよ。使い方をお伝えしたら、研修医にこうしてほしいと思うくらいのすばらしい再現度でした」と回答。

 近藤先生は、「能登半島地震の後、はじめて取れた休みに撮影現場に行きました。DMATの服を着たキャストがたくさんいて勇気づけられましたね。あの現場を見ただけで泣いてしまったDMATのスタッフもいたくらい、セットは見事な再現度でした。同じシーンを何回も撮影するなど皆さん真剣で、本当にありがたかったです」と、撮影現場での思い出を振り返りました。

サプライズで小栗さん、窪塚さんが登場

 ここで、阿南先生の「僕たちの仲間が来てくれています」との言葉の後、会場後方から小栗さんと窪塚さんが登場! 驚く生徒たちから歓声が上がります。

小栗さんと窪塚さん

 まずは増本プロデューサーからのオファーについて、小栗さんは「脚本が届いたときにどのくらい取材をしたのか尋ねたら、350ページほどの分厚い資料があると。それも読んでみたくて送ってもらったんです。読んだらどんな思いでこの作品をつくろうとしているのかが伝わり、これは参加しないわけにはいかないなと思いました」と振り返ります。

 一方、窪塚さんは「旬から『洋ちゃん、コロナを題材にした映画の話があるんだけど』と聞いたとき、正直に言うと一瞬警戒したんです」とのこと。「でも、まるでドキュメンタリーのように、取材に裏打ちされたリアリティーのある脚本であったこと。あと話が前後しますが、船に乗る初日のシーンで、キッチングローブが用意されていたんです。『医療用グローブじゃないんですか?』とスタッフに尋ねたら、『初日、本当に間違いでキッチングローブが届いちゃったんです』と聞いて。そこまで徹底してリアリティーを追求している作品なんだと知り、背中を預けられるなと安心しました」(窪塚さん)

 阿南先生の印象について質問されると、「『脚本で描かれているよりも実物はもっとアクが強いからね』と聞いていましたが、本当にアクの強い人たちだった(笑)。この方たちが熱意をもって作品に向き合っているのだから大丈夫だろうなというのが、最初にお会いしたときの印象です」と小栗さん。 窪塚さんは、「近藤先生が、『もし目隠しして撮影現場に連れてこられたら、当時の現場そのものだから、再びクラスター起こったんじゃないかと思います』と仰っていたのが印象的。僕らは当時の現場を知らないけれど、ここで自分は仙道として生きて、芝居をしたら、そう見えるんだという安心感をもちました」と話します。

小栗さん
窪塚さん

阿南先生と近藤先生の関係性をリアルに反映

 窪塚さんが「阿南先生と近藤先生のように、結城ちゃんと仙道はバディで一大事に向き合っていきました。電話のシーンが多かったよね」と言うと、小栗さんが「洋介くんとついにお芝居が一緒にできると思ったんですが、結局ほとんど会えなくて」と残念がる一幕も。阿南先生、近藤先生からは「実際そうだったんですよ」とフォローが入ります。

 「船の地下でクルーの触診をするシーンでは、阿南先生に立ち会っていただいて安心しました。僕は阿南先生の追体験をすればいいんだなと。聴診器もお借りしたりして、とても心強かったですね」と小栗さん。

 窪塚さんからの、「ささいなことも追求したいと思い、座り方なども近藤先生に質問していました。真剣に命をかけてDMATの仕事に向き合っている。そんなお2人の生き様が現場での僕らのお守りになっていました」との言葉には、小栗さんが「そのおかげで人間味みたいなものがプラスできたよね」と返します。

 DMATについて、小栗さんは「船に乗った皆さんは感染症の対応チームではないということを乗り越えた。ものすごいことをされたんだなと思います。最前線で活動されている皆さんには本当に敬意をもっています」とのこと。

 窪塚さんは、「映画に登場するすべての人がすばらしくて、名もなきヒーローというか、こういう人たちが世界を支えて、守ってくれているんだなと感じました。ささやかなやさしさ、思いやりで世界が満たされていったらいいなと思える作品です」と話しました。

阿南先生と小栗さん

生徒からの質問に答えるQ&Aも

 その後、小栗さん、窪塚さんへの質問を生徒から受け付け。「演じるうえで特に大事にされていた思いは?」との問いには、「いつも阿南先生が仰っている『やれることは全部やる』ということは常に意識していました。結城を演じていて、自分があきらめたら全部終わっちゃうなと思ったので、あきらめないことを大切にしていましたね」(小栗さん)、「ぶれないことを大事にしていたのに、仙道は結城ちゃんに激高してぶれる。その温度感、バディ感を大切にしながら、仙道という役をつくり上げました」(窪塚さん)。さらに窪塚さんは、生徒に向けて「みんな未来のヒーローなんだと、あらためて感じて胸が熱くなりました。本当に心から応援しています。一緒にがんばりましょう」と語りかけました。

 また、「新しいことにチャレンジするときに大事にしていることや心構えは?」との質問には、「僕は46年生きてきたなかで、今が一番幸せ。こうしなきゃ、ではなくこうしたいから、という基準をもって自分軸で歩いてきたので、それが大事なんじゃないかな」(窪塚さん)、「新しいことに挑戦するとき、自分に期待をしないようにしています。期待しなければ、失敗しても落ち込まないので。日々できることを増やしていくのが重要なのかなと思っています」(小栗さん)と答えていました。

小栗さんと窪塚さん2

 最後は会場に向けて、本作をPR。
 「この映画は2020年の話。こんな感じで過ごしていたなという生々しさもまだあると思います。失ったものも、手からこぼれ落ちてしまったものもたくさんあると思うけれど、この映画を通して、それをすべて前向きな力に変え、これから生きていく力にしてもらえたら。1人でも多くの方にこの映画を観ていただけるように、皆さんの力をお貸しください」と窪塚さん。
 そして、小栗さんが、「これからの未来をつくっていく皆さんに、はじめてこの映画を観ていただけてうれしかったです。洋介くんの言葉を借りて…僕らもがんばるので、皆さん一緒にがんばりましょう」と締めくくり、イベントが終了しました。

『フロントライン』

6月13日(金) 全国公開
■出演者:
小栗旬 
松坂桃李 池松壮亮 
森七菜 桜井ユキ 
美村里江 吹越満 光石研 滝藤賢一 
窪塚洋介
■企画・脚本・プロデュース:増本淳
■監督:関根光才
■製作:「フロントライン」製作委員会
■制作プロダクション:リオネス
■配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/frontline/
公式X:@frontline2025
ハッシュタグ:#映画フロントライン
© 2025「フロントライン」製作委員会

災害派遣医療チーム(DMAT)とは
Disaster Medical Assistance Team
大地震、航空機事故、大規模災害、感染症のまん延など、医療体制が逼迫する事態において、迅速に被災地に駆けつけ、命を守るための専門医療チーム。医師・看護師・業務調整員(救急救命士、他医療職、事務職員)から構成され、主に発災直後の急性期(約48時間以内)に活動を開始する災害医療のスペシャリスト。2020年ダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナウイルス集団感染において、専門外である感染症への対応にあたり、未知のウイルスに<最前線>で挑んだ。

日本体育大学 保健医療学部救急医療学科とは
切迫した危機的状況下で、人命に関わる重責を担える、総合的な実践力を持った救急救命士を育成する。救急医療、蘇生医療、災害医療を3つの柱として、それぞれ国際的な立場で実践活動・指導できる救急救命士を育成する目的で設立された学科。医療人として求められる高い倫理観と崇高な精神を学ぶことができ、災害時の情報の管理方法と医療に必要な物品・物質の管理を行う災害医療ロジスティクス業務を、日本で唯一カリキュラムに取り入れている。

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