「患者さんの話、ちゃんと聞けている?」読んで自分を振り返る

白石 作品のなかで、自分の生活や仕事に活きていることってなにかありますか。

かげさん たくさんありますけど、たとえば2巻第6話では、救急外来に急性アルコール中毒で運ばれてきたと思っていた患者さんが実は別の疑いがあって。
 でも、その患者さんの家族は救急医が忙しそうだったから全然話ができず、大切な情報を得る機会が見過ごされてしまうんですよね。救急医は忙しくて、毎日ギリギリのところで戦っているから、そんな構ってられないよと作中でも話にはなっていますが…。

 岸先生は「最初の30秒 医師は口を挟まずに耳目を配れ」と、後に救急医たちの前でピシャリと言うんですよ。これって看護師もそうだなと。
 忙しいからって患者さんの話を聞けていないと思うことは、やっぱりあるんです。その30秒しっかり待つ時間をつくらないといけないなと、これは仕事に活かせたというか、患者さんと話をしているときに頭をよぎるシーンですね。

白石 私も仕事をしていて頭をよぎるほうが多いかもしれません。先ほども触れましたが、『フラジャイル』って「その紙(※)には絶対に嘘を書くなよ」「真実を知っていながらわざと誤解するように人を仕向ける、そういうのをなんて言うかわかるか?嘘って言うんだよ」「嘘なんて全部自分のためだよ」 というセリフがあるように、嘘にまつわる話がずっとされているんです。
 
 自分はうやむやにしていたことがあったかもしれないと、ドキッとして心が痛くなりますね。
(※)病理診断報告書

大森ちゃん わかりますわかります(笑)。『フラジャイル』を読んでいると、医療者としての責任の重さという話が度々出てくるので、読むたびに背筋が伸びる思いですね。自分はこうして患者さんや家族の話が聞けているだろうか、信頼できる看護師としていられているだろうか…と。

 仕事中、たまに漫画のシーンを思い出して、「あ、そうだそうだ」と意識し直すようなことがあります。「さあ、がんばろう」というよりも、「がんばりたい」という気持ちや力をもらっている作品だなと思います。

かげさん

最初の30秒は、患者さんの話を聞く時間。仕事中に岸先生の言葉が頭をよぎります

白石

嘘にまつわる話に、自分はうやむやにしているかもとドキリ

大森ちゃん

「頑張ろう」というよりも「頑張りたい」という気持ちや力をもらえます