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Q. 呼吸性変動の大きい・小さいは何を示すの?

呼吸の大きさ、肺の再膨張、無気肺や胸腔内の液体成分の増加を表します。

呼吸性変動は、3つの要因で変化する

 呼吸性変動を正しく捉えられたうえでの、呼吸性変動の大きい・小さいは以下のようなことを意味しまます。

1)呼吸の大きさによる変動(図1-①)

 患者さんの呼吸の大きさに関係してきます。胸腔内圧の一般的な値である「吸気では-7~-10cmH2O」「呼気では-3~-4cmH2O」は、安静時の呼吸でいわれている胸腔内圧になります。
 そのため、努力様の呼吸となれば、吸気時の胸腔内の陰圧はさらに進むことが考えられます。そうなれば吸気時に水封部の液面が、安静時の吸気時以上に上昇することは想像しやすいと思います。

2)ドレナージによる肺の再膨張(図1-②)

 徐々に呼吸性変動が小さくなり消失していった場合は、ドレナージにより肺が完全に膨張した状態であると考えます。
 このとき、胸腔ドレーンの先端は、膨張した肺によって胸膜に密着した状態となります。そのため胸腔内の陰圧を反映することができなくなり、水封部には陰圧がかかり、水封部の液面は上昇したままの状態となります。
 しかし、急激に呼吸性変動が消失した場合にはドレーンの閉塞が考えられるため、判断を誤らないように注意しましょう。
 必ず胸部X線写真や、そのほかバイタルサインの変動も観察して原因を検索していきます。

3)無気肺や胸腔内の液体成分の増加(図1-③)

 呼吸性変動が大きくなった(増強)した場合は、無気肺を起こしたことによる肺の縮小や、胸腔内の液体成分の増加(胸水出血など)が考えられます。
 胸部X線写真の把握や呼吸音の聴取、ドレーンから排液されるものの性状や量を観察していきます。

図1 呼吸性変動を変化させる3つの要因
1.露木菜緒編:インシデント事例から学ぶ 重症患者のドレーン管理. 急性・重症患者ケア 2013;2(4)
2.二ツ森智子:胸腔ドレナージの管理. 救急看護&トリアージ 2013;4・5月号.

この記事は『エキスパートナース』2018年12月号特集を再構成したものです。
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