【第8回】水封のみ(ウォーターシール)で管理するのはどんな場合?
【第10回】呼吸性変動の大きい・小さいは何を示すの?
【第12回】エアリークはどう観察する?
【第14回】排液はどう観察する?
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Q. 呼吸性移動はどう観察する?
ひとこと回答
●ドレーン装置の「水封室」の水面が、呼気・吸気に合わせて上下することを確認します。
●呼吸性移動が観察できない場合には、「ドレーン先端が肺・胸壁に当たっていることによる閉塞」「ドレーン自体の閉塞」が考えられます。
呼吸性移動は「正常に交通している」ことを示す
呼吸性移動(フルクテーション:fluctuation)とは、呼吸時の胸腔内圧と連動して「水封室」の水面が動くことをいいます(例えばチェスト・ドレーン・バックでは、排液バッグ中央の部屋、図1)。
この移動は、胸腔内とドレーンが“正常に”交通していることを意味します。
呼吸性移動が観察できない場合は注意
呼吸性移動が観察できる場合には、胸腔内とドレーンが正常に交通しているためドレナージが機能していると判断できます。
反対に呼吸性移動が観察できない場合には、肺の再膨張によりドレーン先端部が肺や胸壁に当たっていることや、ドレーンの閉塞が原因として考えられます(第10回参照)。
ドレーン閉塞を疑った場合のチェックポイント
1)回路を順に追って確認する
ドレーンの閉塞が疑われるときには、すぐに回路の点検を行います。閉塞の原因は、ドレーンの屈曲、ねじれ、敷き込み、排液内の凝血塊などです。
ドレーン刺入部から排液バッグに向かって順に観察します(“目につくところ”から順序なく行うと、見逃す部位が出てくるため、一方向に観察することが重要です)。
2)ドレッシング材を剥がして確認する
屈曲やねじれは、体幹などの固定用テープや、接続部のスキントラブル予防に覆ったガーゼの中で起こっていることがあるため、剥がして観察します。
3)ミルキングを行う場合も
凝血塊がある場合には、ミルキングにより改善することがあります。その際には、過度なミルキングによるドレーンの破損や急激な吸引圧の上昇に注意が必要です。
- 1.岸田良平編:心嚢,胸郭,縦隔ドレーン.重症集中ケア 2010;8(6):40-45.
2.岸田良平編:胸腔ドレナージの管理.救急看護&トリアージ 2013;2(6):40-43.
3.長谷川隆一:呼吸器系障害の治療・ケア.道又元裕,他, 編:クリティカルケア実践の根拠,照林社,東京,2012:74-75.
4.笹井智子:胸腔ドレーンのエアリークは、どこに注目?.特集・見逃してはいけない! 腹腔・胸腔ドレーンの管理.エキスパートナース 2011;27(12):27-31.
この記事は『エキスパートナース』2018年12月号特集を再構成したものです。
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