「合理的配慮」について、看護師がおさえておきたいポイントを解説。聴覚障害、歩行障害、視覚障害、精神障害などのある患者さんに対する具体的な事例を紹介します。

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聴覚・言語障害のある患者さんへの合理的配慮

 聴覚障害のある患者さんから「マスクを外して、口をはっきり動かして、会話していただけますか?」と申し出がありました。

NG対応

ナース

院内の規定でマスクを外すことは難しいです。何かあれば、紙に書いておいてください

患者さん

しかたないか……

OK対応

ナース

マスクを外すことは難しいので、他でコミュニケーションをとることはできませんか?

患者さん

アプリを使うのはどうですか?

ナース

ゆっくり話すと正確に文字起こしされますね! 会話の際はこのアプリを使いましょう!
何かあれば、紙に書いておいてください

 患者さんとの対話から、可能な範囲での合理的配慮を提供することができました。円滑なコミュニケーションがとれれば、医療従事者側にとっても、患者さんにとっても適切な医療につながります。

肢体不自由のある患者さんへの合理的配慮

 歩行障害のある高齢患者さんから「階段の昇り降りの際に、歩行器の上げ下ろしを行ってほしい」と電話で申し出がありました。

NG対応

ナース

歩行器の上げ下ろしはちょっと難しいですね……。ここから少し離れますけど、別のクリニックなら階段もないので安心して受診できますよ

患者さん

一番近いのはこのクリニックだけど、しかたないか……

OK対応

ナース

歩行器の上げ下ろしですね。できるように検討してみるので、折り返し電話させてください

(一度、電話を切る/先輩ナースに相談)

ナース

歩行器の上げ下ろし、どうですかね?

先輩ナース

患者さんの少ない時間であれば可能だと思うから、15時ごろに来院できないか聞いてもらえるかな?

(患者さんに電話をかける)

ナース

患者さんの少ない時間であれば対応が可能です。15時ごろに来院していただくことは可能でしょうか?

患者さん

時間の融通は利くので、大丈夫です。15時ごろにうかがいます

ナース

では、お待ちしておりますね!

 患者さんの申し出に対して、自分だけで判断せず、先輩ナースに相談し、対応法を見つけられました。

視覚障害のある患者さんへの合理的配慮

 視覚障害のある入院患者さんから病室で「売店に食べ物を買いに行きたいが、売店内にどんな商品がどこにあるかわからない。付き添って一緒に探してほしい」と申し出がありました。

NG対応

ナース

他の患者さんの対応もしなければならないので、看護師が付き添うことは難しいです。ご家族は来られないですか?

患者さん

そうですか……。(遠方に住んでいるからたぶん無理だろうけど)家族にも連絡してみます

OK対応

ナース

わかりました、一度スタッフでどのように対応できるか検討してみますね。少し時間をください

(ナースステーションで相談)

ナース

このような対応は可能でしょうか?

先輩ナース

付き添うことは難しいけど、売店のスタッフさんであればお願いできると思うよ。電話で聞いてみましょう!

(売店スタッフに電話をかける)

視覚障害のある患者さんがどんな商品を売っているか知りたいのですが、説明はお願いできますか?

(売店スタッフ)「16時ごろは売店も空くので、来ていただければ説明しますよ。他のお客さんが来たときには少しお待ちいただくことになるので、あらかじめお伝えください」

(病室で返答)

ナース

売店までは看護師が送迎し、売店では売店スタッフが商品を案内することは可能です。この方法でいかがでしょうか?

患者さん

その方法だと何が売っているかわかりますね。ありがとうございます

 他職種(ここでは売店スタッフ)の協力を得て、患者さんの申し出を受け入れることができました。

精神障害のある患者さんへの合理的配慮

 精神障害のある患者さんから「大勢の人がいる所で過ごすのは、周囲の視線が気になってしまうので苦痛です。受診を待つとき、どこか静かな個室を使わせてほしいです」と申し出がありました。

NG対応

ナース

他の患者さんも同じようにお待ちいただいているので、特別な対応は難しいです

患者さん

そうですよね……

OK対応

ナース

個室を準備することは難しいので、他の方法で対応させていただきたいです。患者さんの少ない時間帯をお伝えするので、その時間に来ていただくというのはいかがでしょうか?

患者さん

ありがたいのですが、できれば人がいないほうがよくて……。他の方法はないでしょうか?

ナース

わかりました。来院はお車でしょうか?もしお車であれば、車内で待っていただき、受診時間になったら電話でお呼び出しをするという形であれば、他の患者さんのことを気にしなくて済むと思います。いかがでしょうか?

患者さん

車で行く予定なので、その方法がよいです! よろしくお願いします

(受診日、電話で)

ナース

そろそろ診察になりますので、診察室の前でお待ちください

患者さん

わかりました。診察室に行きますね

 患者さんの申し出をそのまま受け入れることができなくても、ナースからの提案により、患者さんは安心して診察を受けることができました。

知的障害・発達障害のある患者さんへの合理的配慮

 自閉スペクトラム症の患者さんより「検査入院で、どのような検査をするのか不安に感じている。事前に教えてほしい」と申し出がありました。

NG対応

ナース

(急いでいる様子で)検査で痛いことはないから安心してくださいね

患者さん

わかりました……(忙しそうだな。何も言えない……)

OK対応

ナース

検査のどのような点に不安を感じますか?

患者さん

検査にどれくらいの時間かかるのか、どのような場所で行うのか、どのような検査の方法なのかが知りたいです

ナース

わかりました。医師に確認してきますので、少しお待ちくださいね

(病室に戻ってきて)

ナース

医師から「実際に検査をする部屋に行って、検査機器を見てもらって大丈夫」とのことでした。検査を行う部屋を見に行きますか?

患者さん

ありがとうございます。見ておきたいです

 自閉スペクトラム症の患者さんの不安な気持ちに対して、できる範囲で(不安を)取り除くための提案。患者さんは安心して検査を受けることができました。

 次回は、看護現場から寄せられた合理的配慮に関する疑問に答えています。

1.内閣府ホームページ:障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針.
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/honbun.html(2026.3.2アクセス)
2.外務省ホームページ:人権外交 障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(Convention on the Rights of Persons with Disabilities).
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html(2026.3.2アクセス)
3.内閣府ホームページ:リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」.
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html(2026.3.2アクセス)

※この記事は『エキスパートナース』2025年4月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。