非がん性呼吸器疾患(COPD)の終末期ケアのポイントは?告知から死亡退院時の各時期における、看護師に求められる役割を解説します。

患者設定

●Aさん 70歳代男性

●5年前に労作時の呼吸困難を訴え、COPDと診断された。

●在宅酸素療法(HOT)を使用し、セルフマネジメントを行いながら療養生活を送ってきたが、症状の増悪と慢性線維化性間質性肺疾患を併発し、入退院を繰り返していた。

●また呼吸困難によるパニック症状を訴え、救急搬送を繰り返している。

●医師からはCOPDⅣ期(高度の気流閉塞)と診断されており、急激な増悪が起こりうる状態だと説明を受けた。さらに、気胸を起こした経歴のある肺の状態では、人工呼吸器を装着することはできないといわれた。

●予後は数か月~1年と宣告されている。

●AさんのADLは徐々に低下し、食べ物を飲み込むことさえ苦しいと言うようになり、食欲が低下してきている。

●Aさんは「食事がとれなくなったら終わりが近いな」と話し、キーパーソンである妻は「夫がなるべく苦しまずに過ごせたらと思う。でも苦しがっている本人を見るのがつらい」と話している。

非がん性呼吸器疾患の終末期の概要

 非がん性呼吸器疾患の終末期は疾患によって異なっており、肺機能の低下や症状は比較的緩慢で、増悪と寛解を繰り返しながら経過をたどります。

 『非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021』では、終末期を「①過去1年以内に複数回の増悪による入院、②ADLの急激な低下(通院困難、あるいは訪問診療への切り替え、要介護状態となったときなど)、③在宅酸素療法やNPPVなどの導入、④フォローアップ中に著明な体重減少(10%/6ヵ月)を認めたときなどが想定される」1としており、予後はおよそ半年から数年と推測されています1

 このように呼吸器疾患の予後予測は困難になるため、意思決定を行うことは困難が予測されます。軽症かつ早期に意思の方向性を確認しておく必要があります。

こちらもチェック
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)の終末期のサインとは?

非がん性呼吸器疾患の余命告知時における看護師の役割は?

ポイント

●家族と「患者さんの価値観・希望、どのように生きたいか」という目標を明確にする。

●多職種をコーディネートし、退院後の療養へスムーズに移行できるよう準備する。

 看護師は、ACPの開始のタイミングと同時に患者さんの価値観や希望、どのように生きたいかという目標を家族と明確にします図12。看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、臨床工学技士、緩和ケア医、臨床心理士、そして在宅での療養を望む場合は、在宅医、ケアマネジャー、訪問看護師、介護従事者、訪問薬剤師などの多職種チームでAさんを支援できるようにコーディネートしていきます。退院後スムーズに地域で療養できるように、入院中から退院支援室の看護師や地域連携室のスタッフとAさんと家族を交えて話し合いを行います。

図1 非がん性呼吸器疾患患者のたどる軌跡と患者状態に対応するケア・サポート

非がん性呼吸器疾患患者のたどる軌跡と患者状態に対応するケア・サポート
(文献2より引用、一部改変)

 看護師には「①患者さんと家族の情報ニーズをアセスメントすること、②患者さんの医学的な状態・治療法について的確な情報提供をすること、③傾聴すること、④情緒的サポートを行うこと、⑤コミュニケーションを支えること」3が求められます。ACPのタイミングは、増悪などによる入院時や回復時から定期的に実施することがよいとされています。Aさんとよい関係を築くために、入院中のケアやかかわりを丁寧に行い、本人の価値観や希望を聞いていき、Aさんがすでに行っているセルフケア行動の支持をします。

 Aさんの自分らしさを保つことができるような生き方をチームでサポートし、伴走していくことをAさんと家族に伝えます。

非がん性呼吸器疾患余命告知時~看取り期における看護師の役割は?

ポイント

●薬剤の使用、呼吸リハビリテーションの継続により、症状緩和を図る。

●症状悪化により食事摂取が困難になった場合、「食事回数を増やす」「嚥下しやすいものを摂取する」などの工夫を行う。

●葛藤を感じている家族に対しても、家族が工夫して行っているケアを認めるなどの対応を心がける。

 症状緩和は、終末期においても原疾患の標準治療が原則となります。薬剤の使用呼吸リハビリテーションを継続することが基本です(図24

図2 重症COPDにおける呼吸困難の管理

重症COPDにおける呼吸困難の管理の図
(文献4より引用、一部改変)

 Aさんが訴えている呼吸困難は、COPDで最も多く見られる症状です。Aさんは苦痛を訴え、パニックに陥る症状でした。

 対応としてまずは、呼吸困難における主観的・量的評価を行い、呼吸困難の程度を客観的に判断します。活動ペースが早すぎることや呼吸困難による不安が、さらに呼吸困難の強さを招いていることもあります。『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 2026』に基づいて気管支拡張薬を使用し、Aさんがそれを適切に使用できているかを確認します。

 呼吸リハビリテーションをはじめとする運動療法を行う際は、指示に基づく適切な酸素量を使用します。Aさんが呼吸困難につながるような行動や思考をしていないかをアセスメントし、非薬物的手段(活動に合わせた呼吸リハビリテーション、口すぼめ呼吸、送風、リラクゼーション手技など)を行います。なお標準治療で緩和されない場合は、症状に応じてオピオイドや抗不安薬が処方されることもあります。

 Aさんの妻が心配していた食欲の低下は、症状悪化とともに頻呼吸や努力様呼吸が増加したことによるものです。咀嚼や嚥下時に呼吸困難が生じており、食事摂取が困難になっています。また呼吸回数増加によるエネルギー消費量の増大経口摂取量の低下、末期に生じる悪液質による筋肉量の低下で体重減少が進行します。こうした場合、下記のような工夫で栄養摂取を行います。

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