ショックの判断には、血圧“以外”も見る

 ショックとは「全身の末梢組織への有効な血流量が減少することにより臓器・組織の生理機能が障害される状態」と定義されます。

 ショックの判断基準(表1)では血圧を目安としているものの、ショックの本態は全身性の循環障害であることに注意が必要です。ショックへの進展過程においては、全身の組織低灌流の発生に対して、その進行を遅らせるべく代償機構がはたらくことに注意しなければなりません。

ここでいう代償機構とは、交感神経系の緊張亢進によって皮膚、骨格筋や腎臓への血流が低下し、脳、心臓、肝臓などの重要な臓器への血流が維持されるよう血流量をシフトさせることです。

 この場合、血圧は維持されており、見かけ上の血圧は正常範囲にとどまります。代償機構が破綻した状態では血圧は低下し、重要臓器においても組織低灌流となってしまいます。

 この代償機構が破綻する前に気づくことが、急変を未然に防ぐことにつながります。

 なお、代償性ショックでは鎮静剤や血管拡張薬などの薬剤投与、体位変換などにより血圧が低下し、ショックとなることがあります。

表1 ショックの判断基準2

  • 大項目:血圧低下;収縮期血圧90mmHg未満または通常の血圧より30mmHg以上の血圧下降
  • 小項目(以下の3項目以上を満たす)
    (1)心拍数100/分以上または60/分未満
    (2)微弱な頻脈・徐脈
    (3)爪先の毛細血管のrefill遅延(圧迫解除後2秒以上)
    (4)意識障害(JCS2桁以上またはGCS合計点10点以下、または不穏・興奮状態)
    (5)乏尿・無尿(0.5mL/kg/時以下)
    (6)皮膚蒼白と冷汗、または39℃以上の発熱(感染性ショックの場合)
1.片山亜樹:06 顔色が悪くてだるそう.森安恵実編:急変・異常 “早めの”見抜き方ポイント.エキスパートナース 2013;29(5):61.
2.一般社団法人日本救急医学会監修,一般社団法人日本救急医学会専門医認定委員会編:救急診療指針 改訂第4版.へるす出版,東京,2011:74.

1.濱本実也,蟹沢信二 編著:先輩ナースが伝授 みえる 身につく 好きになる アセスメントの「ミカタ」.メディカ出版,大阪,2010:116-122.
2.藤野智子,道又元裕編;急変の見方・対応とドクターコール.南江堂,東京,2011:144-147,154-155,158-159.

急変を疑ったときのフィジカル【第2回】顔色が少し悪く見えるときの3step②バイタルサインなどを“いつも”と比較する

この記事は『エキスパートナース』2017年5月号特集を再構成したものです。
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