胸腔ドレーンの忘れがちな基礎と、迷いがちな点をピックアップ。胸腔ドレーンの挿入部位や使用される場面、注意したい合併症を紹介します。
胸腔ドレーンはどんな場面で挿入する?
胸腔ドレーンは、胸腔内に空気や液体が貯留したときと開胸術後に行われます。図1のように、臓側胸膜と壁側胸膜の間の胸膜腔に挿入され、その目的は、胸腔内の空気や液体(胸水、血液、滲出液、膿瘍など)の排出です。
図1 胸腔ドレーンの挿入部位

胸腔内の排気・排液をすることで、胸腔内の陰圧を保ち、肺の膨張を促して、換気・酸素化の改善を図ります。胸腔内圧の変化により循環障害をきたしている場合は、循環動態の改善にもつながります。
一方で、挿入時は以下のような合併症にも注意が必要です。“挿入目的”や“期待する治療効果”を把握して、適切なドレーン管理を行うとともに、合併症の予防・苦痛緩和を図り、患者さんの早期回復につなげましょう。
胸腔ドレーンの合併症
- 肺損傷
- 皮下気腫
- 再膨張性肺水腫(虚脱肺の再膨張により血管透過性亢進が生じ、肺水腫をきたした状態)
- 肋間動静脈損傷
- 逆行性感染
- ドレーン閉塞
胸腔ドレーンを使用する3つの場面
胸腔ドレーンが使用されるのは、以下の3つの場面です。
①胸腔内に空気が貯留したとき
●気胸(自然気胸、外傷性、医原性等)が該当する。
②胸腔内に液体が貯留したとき
●心不全や胸部外傷、感染性またはがん性胸膜炎などにより、胸水・血液・膿等が溜まった状態。
➂開胸術後
●術後は、排出が必要な空気や血液が溜まる。
●排液の性状およびエアリーク等のモニタリングも必要。
胸腔ドレーン挿入の目的は?
①排気
肺が虚脱して換気障害が起きるため、排気により改善を図るためドレーンを挿入する。
●挿入箇所:鎖骨中線上の第2~4肋間
●先端位置:肺尖部
●カテーテル:アスピレーションキットやトロッカーカテーテル(12~16Fr)
*空気は軽く、胸部の上方に溜まるため、肺尖部に挿入する
②排液
液体等によって肺が圧迫され、膨張が障害されるため排液が必要になる。
●挿入箇所:前~中腋窩線上の第6~8肋間
●先端位置:肺底部周辺
●カテーテル:アスピレーションキットやトロッカーカテーテル(20~28Fr)
*液体は重力により、胸部の下方に溜まるため、肺底部付近に挿入する

- 1.露木菜緒:胸腔ドレーンシステムのしくみ. 急性・重症患者ケア 2013;2(4):828-839.
2.藤野智子, 福澤知子編:ドレーン管理. 南江堂, 東京, 2014:78-87.
3.平田雅子:NEWベッドサイドを科学する. Gakken, 東京, 2000:117-125.
4.住友ベークライト株式会社:チェスト・ドレーン・バック取扱説明書.
5.加納隆編:ナースのためのME機器トラブルチェック. 南江堂, 東京, 2005:155.
6.桐林孝治, 他編:胸腔ドレーンのトラブル. 消化器外科ナーシング 2009;14(3):48-57.
この記事は『エキスパートナース』2018年12月号特集を再構成したものです。
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