【第1回】PICSって何?
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家族の精神障害であるPICS-F

 PICS-Fとは、重症患者の家族の精神障害であり、患者がICU在室中や退室後、または逝去した場合に生じます。表1に示すように、PICS-Fは、うつ・不安・PTSD(心的外傷後ストレス障害)などによって構成され、その有病率は20~40%程度です1

 PICS-Fの危険因子は、家族が女性、患者や家族が若年、患者が配偶者であることなどが知られています1。また、患者の精神障害が重度であるほどPICS-Fも重度であることが報告されています2。これは、患者の精神状態が家族に影響する可能性を示唆しています。そのため、PICS-Fの予防と対策として、まずは患者の回復を支援するケアが重要となります。

表1 PICS-Fの構成要素と有病率
(文献1より一部改変して引用)

PICS-Fを予防する家族のリハビリテーションの参加

 近年、ICUにおける早期リハビリテーションが推進される一方で、ICU退室後には半数以上の患者で活動レベルが低下している現状があります3。ICU退室後のリハビリテーションの継続は、身体機能のみならず、精神状態をも改善させる可能性が報告されています4

 筆者らの調査では、ICU退室後の精神障害が重度の患者ほど、家族に自身のリハビリテーションへ参加してほしいと思っていました(未発表データ)。一方、多くの家族は、大切な人の重篤な状態を前にして、自分が何もできないという無力感を感じています。

 リハビリテーションは、家族が参加できる治療の1つです。そのため、継続したリハビリテーションと家族の参加は、患者と家族双方の精神状態を回復させる可能性が考えられます。