理学療法士の視点からの解決策

喜多(理学療法士) 患者さんにかかわるスタッフみんなが状況を把握して、対応を検討するとよいですよね。

 リハスタッフは患者さんの生活背景や趣味などを深く情報収集するので、ちょっとした怒りポイントや喜びポイントを知っているものです。それをほかのスタッフと共有することで対策につながるかもしれません。

 例えば、「時間に厳格だから検査や入浴の時間はしっかり伝える」「マナーに厳しいから部屋のカーテンを開けるタイミングに気をつける」といった対応が功を奏することがあります。

 また、看護師さんだけにナースコール対応のしわ寄せがいかないように、リハスタッフから患者さんに声をかけてもらうのもよいですね。例えば、「すぐにナースコールに対応できないこともあります。体がつらいときがあるのはわかりますが、その点はご了承いただけますと幸いです」と伝えたり、リハビリのついでに困りごとを聞いたりすると、適度にガス抜きができて理解してもらえることがあります。

 担当リハスタッフからの声かけでうまくいかないときには、リハスタッフの上司や先輩から伝えてもらう、といった工夫も必要です。

言語聴覚士の視点からの解決策

みややん(言語聴覚士) そうですよね。看護師とリハスタッフで同じ患者さんを見ていても、見えてくる側面って異なることがありますよね。

 私は、年齢が1つのポイントになると思うんです。例えば、このケースのように定年前後の世代であれば、部長職まで勤め上げたということを踏まえて、「これまでは仕事に打ち込んでいたけれど、今後のことに不安を感じている」「精神的に不安定になっている」ということも考えられます。病状や退院への目標以外にも、性格や年齢、価値観などを含めた生活背景をしっかりと情報共有する必要がありますね。「ちょっと怒りっぽいところがあるって家族さんが言ってたよ」なんていう情報は案外大切ですから、看護師さんには積極的に伝えるようにしています。

 もちろん、「リハビリ中の様子はどうですか?」「夜勤帯ではじつは……」といった会話が、看護師とリハスタッフ間でもあたりまえにできれば、つらさを吐き出す機会になって心が救われることにもなりますよね。

久原(臨床工学技士) 患者さんの性格や生活背景を情報共有し、患者さんに合ったスタッフや対応をすることは必要ですよね。
 また、「なぜハラスメントを起こすのか?」というところで、入院や手術の不安からくるストレスが原因の可能性もあるかもしれないので、そこを踏まえた対策を講じることも必要かもしれません。
 臨床工学技士としてよいアドバイスかどうかわかりませんが、物(医療機器)のせいにしてしまう手もありじゃないでしょうか「機械の設定に時間がかかります。精密機械(輸液ポンプ)で正しく操作しないと◯◯さんのためにならないんです」というふうに怒りの対象を人から物にそらすのも、一時的なしのぎにはなるかもしれません。