腸内環境と乳酸菌の関係とは?腸内細菌の産生物質と生体機能への影響など基礎知識を紹介するほか、乳酸菌製剤の特徴と使い方についても解説しています。

POINT

●乳酸菌の産生物質は、腸管の運動や感覚をはじめとする諸機能をコントロールしているほか、悪玉菌の増殖の抑制、体内への有害物質の侵入を防ぐ効果がある。
●加齢や生活習慣による腸内細菌バランスの変化に応じて、乳酸菌製剤の使い方を考えよう。

腸内細菌叢の基礎知識

 腸管内には人体の菌の70%以上が生着し、約1,000種・100兆個の菌が主に大腸に存在します。腸内細菌のバランスや多様性には個人差がありますが、これらを保つことによって健康を維持しています。つまり、ヒトは腸内細菌と共生しているのです。

 腸内細菌叢(そう)は20%の善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)、10%の悪玉菌(ウェルシュ菌・大腸菌など)、70%の日和見菌(バクテロイデスなどの体調が悪くなると悪玉菌になる菌群)でバランスが保たれています。

 経腟分娩・母乳栄養児では乳酸菌よりビフィズス菌が優位ですが、年齢とともに変化します。60歳以上では善玉菌が減って、ビフィズス菌と乳酸菌の差は小さくなり、悪玉菌が増えます

 腸内細菌は水溶性食物繊維などを発酵して、短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)を産生します。

 ビフィズス菌は酢酸と乳酸、乳酸菌は乳酸を産生し、乳酸は腸内細菌によって酪酸とプロピオン酸に代謝されます。また、細菌による発酵によって水素・メタン・硫化水素などのガスが産生されます。 これらの腸内細菌の産生物質が生体の生理機能に影響を与えます(図1)。

図1 腸内細菌の産生物質と生体機能への影響

腸内細菌の産生物質と生体機能への影響の解説図

 腸内細菌の産生物質は大腸内の環境維持、腸管の運動や感覚、脳腸相関とメンタルヘルス、免疫機能、腸管のバリア機能、代謝機能などをコントロールしていることが明らかにされています。

 短鎖脂肪酸は大腸上皮のエネルギー源となり、大腸内を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑えます。また、腸管上皮のバリア機能を維持して血液中への細菌や有害物質の侵入を防ぎます。腸管の蠕動(ぜんどう)運動を促進し、水・電解質の吸収も促進します。
 産生された酪酸は制御性T細胞を誘導して炎症を抑え、過剰な免疫応答を抑制します。プロピオン酸は脂肪の蓄積を抑え、肝臓や筋肉のエネルギー消費を促進して肥満を防いでいます。

 腸内細菌叢のバランスは、偏食(タンパク質や脂肪の過剰摂取、食物繊維不足)、抗菌薬の投与、ストレス、高度侵襲、加齢、細菌感染などにより崩れてしまうとさまざまな影響が現れてきます。腸内細菌叢のバランスが崩れると生じる疾患などには下記のようなものがあります。

腸内細菌叢のバランス悪化が発症に関与する疾患

消化管疾患
感染性腸炎、便秘症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア
代謝性疾患
糖尿病、肥満、生活習慣病
アレルギー・自己免疫性疾患
食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、関節リウマチ、多発性硬化症
精神神経疾患
発達障害、うつ
感染症
バクテリアルトランスロケーション、消化管術後感染症、敗血症

腸内細菌叢のバランスを改善するには?

 腸内細菌叢のバランスを改善するためには、次の3つの方法があります。

①プロバイオティクス(腸内細菌叢に作用してバランスを改善する生きた微生物)を投与すること
②プレバイオティクス(フルクトオリゴ糖などの腸管内の有用菌を活性化・増殖する物質)で善玉菌を増やすこと
③シンバイオティクス(プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたもの)で相乗効果を得ること

 最近は新たな腸内環境改善を目的に便移植療法がクロストリジウム・ディフィシル菌感染症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群などの治療で試みられています。

乳酸菌製剤の特徴と使い方

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