知っているようで意外と知らないバイタルサイン数値の“測定手技”や“判断の根拠”。「患肢で血圧を測っていい?」「心電図と実測で、脈拍に差は出る?」「バイタルサイン観察の頻度、どれくらいが適切?」など、気になる&知りたい具体的なポイントをご紹介します。

 一般的に体温測定には、簡便さから予測式の電子体温計が使用されています。
 また、測定部位は腋窩を使用することが多く、腋窩に“仮の体腔”をつくることで深部熱を測定しています。正確に測定するために下記の点について注意が必要です。

①体温計の感温部を腋窩中央のくぼみに正確に当たるようにする

 中核で温められた血液が腋窩動脈を流れることで、腋窩は温められます。

 そこで、動脈血の温度が測定できるよう、電子体温計の感温部をできるだけ腋窩動脈に近い位置(腋窩中央のくぼみ)で固定できるようにします。

②上腕と体幹を密着させることで腋窩を閉ざした状態を維持する

 上腕と体幹を密着してもらい、閉ざされた腋窩により体腔と同じ環境をつくります。

 閉鎖がきちんとできていると、腋窩の大部分が平衡温(中核温に近い温度)に達します図11。逆に閉鎖が十分でないと、外気温の影響を受け温度が十分に上昇しません。

図1 平衡温に達するまでの体温上昇カーブとワキ(腋窩)のサーモグラフィー
図1 平衡温に達するまでの体温上昇カーブとワキ(腋窩)のサーモグラフィー

③汗の気化熱に注意する

 汗などの水分が気化するときに、気化熱として熱を奪われることで体温が低下します。

 発汗は測定中にも起こりますが、外気に触れないようにすることで、短時間であれば気化することを防げるかもしれません。また、測定前に確認し汗を拭いておくことが必要です。

④外気温が低い環境で腋窩が解放された状態が長く続いた場合、密着時間をつくってから測定する

 腋窩が長い時間開放されると、皮膚の温度が外気温の影響を受けて低下し、通常よりも平衡温に達するのに時間を要します。

 予測式体温計の場合、閉鎖して、腋窩の温度が“約10分後”にどの程度まで上昇するかを予測するので、平衡温に達する前の体温を指してしまう恐れがあります。

高齢者、子供の体温測定時

 高齢者の場合、側臥位の下側は血液循環が悪くなっていることを考慮して、測定時に注意が必要です。上側で測定する、仰臥位に戻してから測定するなど、血流の阻害を改善してから体温測定をします。

 また子どもの体温測定時など、長く同一体位を保つことが難しいときは、非接触型皮膚赤外線体温計によって、体表で最も深部体温の測定がしやすい前額部で測定する方法も簡便です。

1.山蔭道明監修:体温のバイオロジー 体温はなぜ37℃なのか.メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2005:167.
1.日野原重明:刷新してほしいナースのバイタルサイン技法.日本看護協会出版会,東京,2002.
2.村中陽子,玉木ミヨ子,川西千恵美:学ぶ試す調べる 看護ケアの根拠と技術.医歯薬出版,東京,2013.

バイタルサインの常識【第2回】発熱時の“クーリング”は意味がない?

この記事は『エキスパートナース』2017年1月号特集を再構成したものです。
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