症状から病態を察する技術「症候学」。看護師が症候学を学ぶための学習プロセスやポイントを、國松淳和先生がわかりやすく解説します。
※この記事は『エキスパートナース』2026年8月臨時増刊号「ナースのための症候学」の内容を抜粋したものです。
前回の記事:「症候学」とは?看護師に必要な「症状から察する力」を身につける
症候学をどう学ぶ?
症候学を身につけるには、残念ながら一朝一夕では無理なんです。
じつは症候学に限らないんですが、つまり、勉強して何かを身につけるってこと全般に言えることについて、少し述べます。それは、
①「例題1 → 例題2 ……→ 例題nをこなす」
という段階の後に、
②「原理・原則がわかってくる」
があり、その次に、
③「応用問題をやる」
がきて、それで、
④「ひたすら演習」
のフェーズとなるのがだいたいの場合です。この①〜④をこなして、あることが習得できたり、見えてくるものがあったりするのです。学習の一般論と思ってください。
①例題1→例題2…→例題nをこなす

②原理・原則がわかってくる

③応用問題をやる

④ひたすら演習

こういうことを学生時代にちゃんとやりましたか? 私はまさにこれは、例えば高校数学だなと思いました。私は、特に算数や数学の天才などでは決してなく、新しい単元は最初は普通にちんぷんかんぷんでした。が、授業や教科書や参考書を使って①②を経て少しだけ何かを見いだし、その後、問題集などで③や④をやるわけです。もちろん順序はいろいろ入れ替わります。①→②→③→②→③→④、とか、①→②→①→③→④、とかまあなんでもいいんですが、ポイントは次のようです。
●①+②、あるいは②だけで終わってはいないということ
●結局あとは実戦で数をこなすということ
よくない学習というのは、効率よく学ぶことをめざしすぎるためか、いきなり「簡単な②」を探して、それを覚えてしまって終わらせようとするものです。これは効率よく、ではなく単にサボっているだけです。臨床は実学であり、実践のなかで実践知が身につくので、どっちかと言えば帰納的なやり方の学習のほうが多いわけです。
これを臨床に当てはめると、つまりは仕事をすること自体が、(②のような)何かを見いだす過程となるのです(だから、初期研修医よりも慣れた看護師さんのほうが、仕事やある程度のアセスメントができたりするのです)。
では、まことに失礼ながら、なぜみなさんが身につかないか。それは、よき指導者に教わらなかったからです。①②③④の間には矢印がいろいろな方向や順序で入っているのですが、この矢印こそが「指導」であったり、「勉強」であったり。でも、学生に戻れるわけではないので、当面はこれを自分の努力でやるしかないわけです。まあがんばりましょう。私もそうやってきました。
最後に、症候学というのが例えばどんな感じのことかを具体的な本で紹介します。『診察エッセンシャルズ 新訂第3版』(日経BP、2020年)という本は、医書ですが一番「症候学」って感じがします。購入必須の課題図書にするつもりはありませんが、意欲のある人は本屋さんでパラパラとめくって症候学というものの雰囲気を見てみてもいいでしょう。
新しいことを学ぶつもりで
みなさんは症候学をフレッシュな気持ちで学んでください。新しい概念をこれから入れていくんだっていう、ちょっとワクワクした気持ちでいてください。
ただし、症候学を勉強するときに必ず意識してほしいことがあります。これは絶対ですのでそのつど強調はしますが、「まだいろいろわかっていない(=情報がそろっていない)段階で考えるのが症候学ということ」です。臨床では時間が経つにつれて必ず情報が増えていきます。
今ここで話題にしているのは、ある時点において、その瞬間でしかわからない限られた情報を最大限生かして、未来のことを予想(できれば推論・推測)するということなのです。情報が集まって、いろいろわかってからならいくらでも言えるんです。「それはこうすればよかったじゃん」って後からサクッと言われてしまうことがありますが、それはあまりよい振り返りではありません。
「症状から、まだわかっていない病態を類推する」ということは、つまりはそれはそれで別途トレーニングが必要だということなのです。なので、きっとみなさんは症候学を学んだことがありません(経験で、教わらず自然に身につけてしまっているすごい看護師さんもいますが!)。
未来を推測する力をつける。
そのために、どんな情報をどのようにとればよいかについて具体的に考える。
そして、そのための必要な知識をつける。
これです。みんなで症候学しましょう!

\続きは誌面で/

エキスパートナース2026年8月増刊号
ナースのための症候学
國松淳和 著
B5・176ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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