【第4回】水封室の管理
【第7回】吸引圧はなぜ調整をするの?どう判断して変更しているの?
【第9回】水封室の水位が、いつもより上がった・下がったときは何を疑う?
【第13回】呼吸性移動はどう観察する?
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Q. 水封のみ(ウォーターシール)で管理するのはどんな場合?

●時間をかけて脱気すれば問題ない、重篤でない気胸で用いられます。
●吸引圧をかけることにリスクのある場合でも選択します。

主に重篤でない気胸で行われる

 胸腔ドレナージ実施中に、積極的にドレナージ効果を期待する場合は吸引圧をかけます。しかし、水封で持続的に管理することにより、時間をかけて脱気することができれば問題ない場合には水封(ウォーターシール)で管理します(第6回参照)。そのため、水封で管理する方法は、主に重篤ではない気胸の患者さんに行われます。

吸引圧をかけることにデメリットがある場合も行われる

 重篤な場合は吸引圧をかけて、ある程度状態が改善してから水封管理となりますが、以下のような場面では水封のみで管理します。

1)陰圧による負担が治療を妨げるとき

 気胸を起こしている部位に陰圧をかけていることによる負担がかかり、治療効果が得られないと考えられるときには水封が選択されます。
 胸部X線写真で効果を判定したり、その他呼吸状態や循環動態も含め全身状態からも判断して、水封とするかを決めていきます。

2)再膨張性肺水腫の恐れがあるとき

 また、時間をかけずに一気に肺の再膨張が起こったために起こる再膨張性肺水腫につながる可能性がある場合には、水封で管理することになります。気胸や血胸へのドレナージ実施後、多量の泡沫状血性痰が認められたり、喘鳴が聴取されるなどの所見が見られたときは水封管理が検討されます。

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4.住友ベークライト株式会社:チェスト・ドレーン・バック取扱説明書.
5.加納隆編:ナースのためのME機器トラブルチェック. 南江堂, 東京, 2005:155.
6.桐林孝治, 他編:胸腔ドレーンのトラブル. 消化器外科ナーシング 2009;14(3):48-57.

この記事は『エキスパートナース』2018年12月号特集を再構成したものです。
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