皆さんが看護師として、日々行っている臨床現場での「実践」。それらは、どんな“気づき”をきっかけとして起こるのでしょうか?また、“患者さんの力”をどう引き出すのでしょうか?
 事例紹介をもとに、看護介入をナラティブに伝えます。

適応障害により、日常生活が1人で行えなかった患者さんとのかかわり

 今回紹介するAさんは、22歳の女性で、適応障害の患者さんでした。BMI「40」の肥満という以外は身体的な異常はなく、1人で動けるはずなのに、排泄行動や入浴ほかのADL(日常生活動作)が1人では行えず、依存的で訴えが多い方でした。

 反面、看護師の提案に対しては、常に「イヤ」「やりたくない」など拒否的で、病棟ではAさんに対して陰性感情をもつ看護師が多くいました。

 今回、病棟プライマリーナースのB看護師から「Aさんにどのようにかかわったらよいか、わからない」と相談があり、専門看護師である私が介入することになりました。

 Aさんの両親はAさんが幼少のころに離婚していたため、Aさんは病弱な妹と、精神的に不安定な母親と3人で暮らしていました。幼少期や学生時代は、いじめに遭うことが多かったようです。家では、Aさんがアルバイトと家事を1人でこなし、家族の生活を支えていた時期もあったとのことです。

 詳細はわかりませんが、数年前に妹、そして1年前に母が、いずれもAさんが外出中にお亡くなりになりました。以後、Aさんは生活保護を受給し1人で生活をしていましたが、徐々に不眠、抑うつ気分などの症状が出現し、活動性が低下していきました。

 そして、とうとう身の回りのことが1人でできなくなり、ほぼ寝たきりの状態となってしまったため、症状の改善と生活の立て直しのために入院となりました。

*執筆当時、『ICD-10(国際疾病分類第10版)』により、「適応障害」と診断された