心不全の緩和ケアについて解説。終末期に現れるサインや、症状・病態の変化、呼吸困難、疼痛、全身倦怠感といった症状や精神症状に対するケアを紹介します。

心不全のステージ分類

 心不全の臨床経過として、米国心臓協会(American Heart Association:AHA)のステージ分類1が有名です(図1)。難治性や末期の心不全は「治療抵抗性心不全(ステージD)」に分類されますが、その前の「ステージ C」から症状コントロールに加えて緩和ケア介入することが治療目標とされています。

図1 心不全とそのリスクの進展ステージ

心不全とそのリスクの進展ステージの図

心不全の予後予測

 心不全の予後予測に有用なリスクスコアモデルはThe Seattle Heart Failure Model(SHFM)3*1をはじめとして複数提唱されていますが、いずれも集団を対象としており、個人の予後予測にはあまり有用ではありません。

 予後を考えるには、こちらの記事に示したサプライズ・クエスチョンを行い、驚かなければ緩和ケアを導入する、というのも有効な方法です。
 終末期にかけて慢性心不全の急性増悪による入院がくり返されるようになるため、再入院の予測因子(下記の「心不全増悪による再入院の予測因子」)に注意し、入院回数が頻回になったときに医療者チーム・患者・家族で話し合いを設けるなどの準備が必要でしょう。

心不全増悪による再入院の予測因子

①外来フォローの間隔が1か月以上空いている
②心不全の入院歴がある
③無職
④14日以上入院していたことがある
⑤高血圧の既往がある
⑥医療チームのサポートがない
(文献2より引用、一部改変)

サプライズ・クエスチョンで“驚かない”場合も、緩和ケアを導入

*1【The Seattle Heart Failure Model(SHFM)】心不全介入後の死亡率を予測するためのモデル。

心不全の終末期にみられる症状

 終末期に向かう慢性心不全患者では、呼吸困難、倦怠感、浮腫などの原疾患による身体症状に加え、不眠やうつなど精神的症状も徐々に増悪し、結果としてADL低下、QOL低下を招きます(図2)。

図2 心不全の終末期にみられる症状

心不全の終末期にみられる症状のイラスト
*治療により心不全のステージ(図1)が戻ることもある

 とはいえ、徐々に終末期に向かう段階でも、治療的薬剤(β遮断薬、ACE阻害薬、抗アルドステロン薬など予後を改善する薬剤)および緩和的薬剤(利尿薬、血管拡張薬、強心薬など症状を緩和する薬剤)による介入や、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)*1 をはじめとしたカテーテル介入、あるいは移植によりステージ(こちらの記事・図1参照)が戻ることもあり、典型的な終末期の症状や検査データといえるものは明確ではありません

心不全患者への意思決定支援

 米国心臓協会により示された心不全患者の終末期意思決定のタイミング(下記参照)を参考に、特に「適切な再評価の契機となるイベント」についてよく観察し、適切な時期から意思決定支援を開始する必要があります。

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