「難水溶性」「電解質」「コロイド」などのキーワードを把握しよう
なお、今回問題となったフェニトイン注は、脂溶性が高いので水に溶けにくく(難水溶性)、生理食塩液や注射用水に溶解する場合でも注意が必要です。溶解補助剤の許容範囲を超えて希釈されると、この場合も結晶が析出してしまいます。このように、薄めることで引き起こされる配合変化もあるので、かかわったことがあるものから少しずつ覚えていきましょう。脂溶性の高い薬は、中枢神経系に作用する薬剤が多いので、頭の片隅に置いておくとよいと思います。
また、先輩看護師から言われたように、電解質などを含む輸液製剤も配合変化に気をつけたほうがよいです。例えば、一時的に絶食せざるをえない肺炎の患者さんに、PPN(peripheral parenteral nutrition:末梢静脈栄養)と抗生剤の投与が必要になる際に、カルシウム(Ca)を含む輸液製剤(ビーフリード®輸液など)とセフトリアキソン注(ロセフィン®静注用)を同時投与すると、難溶性の結晶を生成するため、別ルートで投与するか、前後フラッシュを行うこととされています。
他にも、エステルなどの加水分解やコロイドの塩析・凝析など、多様な機序で配合変化が起こるため、それらをすべて把握するのは薬剤師でも困難です。
必要最低限なものを覚えて、わからないときは詳しい人に確認しよう
ここまで、代表的な配合変化の例をお伝えしましたが、「膨大な注射処方をいちいち確認していられないよ!」というみなさんのために、最低限、気をつけるべきポイントをまとめました。
①採用薬で配合変化が起こりやすいものをある程度知っておく
最初は上表に挙げた薬剤だけでも、病棟で見かけた際に「何かあったな……」と思えるとよいですね。余裕が出てきたら、採用薬の中で配合変化が起こりやすい薬剤を探してみましょう。注射処方せんにフラッシュ用の生理食塩液を見かけたら、覚えるチャンスです!
②新規処方や新しい組み合わせを見かけたら確認する習慣をつける
何回も見かけている組み合わせについては、まず安心してよいと言えます。新しい組み合わせに気づいたら、ぜひ調べてみてください。オンラインで公開されている各薬剤の添付文書の、「製剤の性状(pH、浸透圧)」「用法・用量(溶解液)」「適用上の注意(投与経路、投与時など)」で確認できます!
③注射薬に詳しい先輩看護師や薬剤師とコネクションをもっておく
自分が所属する病棟の頻用薬で、配合変化に注意すべき薬剤は何か、事前に先輩看護師や病棟薬剤師に聞いてみると、詳しい人を紹介してもらえるかもしれません。早めに見つけておくと、いざという時に安心ですね!
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薬剤部では、配合変化についての資料がすぐ見られるようにしてあるほか、過去にインシデントが発生した薬の保管場所に注意喚起のシールを貼ったり、注射処方せんの薬剤名に(配合変化注意)などの文言を追加したり、システム面での工夫も取り入れているところが多いです。
注射薬の配合変化のポイントを知ること、わからないことをそのままにしないことは、未来の自分を救う意味でも大切です。注射薬の処方に少しでも不安があるときは、いつでもお近くの薬剤師に問い合わせてくださいね!
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この記事は『エキスパートナース』2021年9月号連載を再構成したものです。
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