がん終末期の患者にSpO2の値だけを基準に高流量の酸素投与をすることは、必ずしも有効とは言えません。酸素投与開始後の注意点や、がん患者の呼吸困難の特性など看護師が知っておきたいポイントを解説します。
SpO2の値だけで、高流量の酸素投与をしてはいけない
〈理由〉終末期患者に高流量の酸素投与は必ずしも有効ではなく、苦痛やデメリットも多いから
パルスオキシメータでのSpO2測定時の注意点は?
SpO2の値だけを基準に、酸素流量の設定をしていることはありませんか。
パルスオキシメータにおけるSpO2の測定では、そもそも表1のように注意すべき点があります。SpO2値を見るときは、まずはそれを念頭に置くことが大切です。
表1 パルスオキシメータでのSpO2測定時の注意点
SpO2低下時、測定の信頼には限界がある
●一般にSpO2が75%以下では、実際の動脈血酸素飽和度より高めに表示されることもあり、信頼性は低くなる
プローブのずれなどにより測定できないことがある
●体動・戦慄などによりプローブがずれることで測定不能になりやすい
●浮腫のある指や角質層の厚い指、マニキュアが塗られている場合、測定できないこともある
末梢循環不全では測定できない
●心不全・血圧低下などで末梢動脈の拍動が消失するほどのショック状態、マンシェット圧迫などでは測定できない
がん終末期患者に高流量酸素投与は有効?
酸素療法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や、うっ血性心不全の患者さんには有効であるとされています。しかし、がんに伴う呼吸困難では、これらの疾患のようには酸素に反応しないこともあるようです。
『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)』によると、「低酸素血症があり呼吸困難を有する進行性疾患患者に対して、高流量鼻カニュラ酸素療法(high flow cannula oxygen;HFNC)を行うこと」は「2C(弱い推奨)」とされています1。また「通常の酸素療法と比較して呼吸困難を緩和する明確なエビデンスは得られていないが、長期間使用の効果を検討した複数の研究でQOLが示されており、HFNCを行う有用性はある」1とも示されています。
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