意識障害に早期に気づくためには、まず意識混濁を見抜くことが重要です。観察のポイントや評価方法、対応について、わかりやすく解説します。
意識障害の一部としての意識混濁
(生命の危機状態のサインであることに気づこう!)
●意識混濁の有無
●A(気道)、B(呼吸)、C(循環)の評価
●意識レベル(JCS/GCS)
●AIUEOTIPS
↓気づきたいポイント
●反応が鈍い
●ぼんやりしていて動作が緩慢
●呼びかけると起きるが、すぐにまた眠ってしまう
●呼びかけても反応がない
意識障害の観察ポイントは?
1)意識混濁に気づく
患者が昏睡状態にあれば明らかですが、意識混濁が軽度の場合は、見逃してしまう可能性があります。
意識混濁に気づくためには、患者に接した際の第一印象が重要です。患者に近づいたり声をかけたりした際には、注意をこちらに向けることができているか”“ぼんやりしていないか”“反応が鈍くないか”“会話はできるか”など、「ふだんと違う、何か変な感じはないか」を確認します。
2)生命危機に直結する A(気道)、B(呼吸)、C(循環)の評価
意識混濁患者は、意識と同時に呼吸や循環に重篤な異常を呈している場合があります。
そのような場合には、一刻も早い対応が、患者の生命予後および機能予後を大きく左右するため、意識混濁に気づいた際には同時に、生命危機に直結するA(気道)、 B(呼吸)、 C(循環)を観察します。
もし下記のようなABCの異常があれば、すぐに緊急コールをし、一次救命処置(BLS)を開始します。
①Airway(気道)
声が出ない、音がする呼吸、窒息・気道閉塞
②Breathing(呼吸)
呼吸をしていない、胸郭が上がらない
③Circulation(循環)
脈が触れない、脈が非常に弱い
3)意識レベルの評価(JCS/GCS)
生命危機に直結するABCの異常を認めない場合は、次に意識レベルを評価します。
意識レベルは呼吸・循環と同じように重要なバイタルサインの1つであるため、「呼吸数○○回/分」「血圧○/○mmHg」などと同じように、誰もが同様に理解し、判断できるための指標が必要となります。
日本では意識レベルの評価に「ジャパン・コーマ・スケール(JCS)」と「グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)」が広く用いられています。
①Japan Coma Scale :JCS
覚醒を中心とした評価で軽快・増悪がわかりやすく、「1桁」「2桁」「3桁」の3つに大きく分けられ、その後、それぞれの程度を評価します。
「桁数」で大まかな重症度を把握できる点が利点であり(緊急性を迅速に伝えたい場合には桁数だけを伝える場合もあります)、救急隊を含めて日本で広く普及しています。
しかし、評価者によって点数のばらつきが多い点や、日本以外では使用できない点が欠点です。
②Glasgow Coma Scale :GCS
意識を「開眼」「言語反応」「運動反応」の質の要素に分けて、それぞれを「開眼(E)」「最良言語反応(V)」「最良運動反応(M)」によって評価します。それぞれの点数と、合計点を伝えます(E○-V○-M○:合計□点のように評価)。
E・V・Mの評価法が具体的であり、評価のばらつきが少ない点や、国際的に普及し標準となっている点が利点です。しかし、気管挿管患者のVが評価困難であること(一般的には点数ではなく「T」と表す)が欠点です。
4)その他のバイタルサインの観察
① 呼吸
意識混濁患者は、舌根沈下や吐物・口腔内分泌物などにより気道閉塞をきたしやすいです。気道閉塞は生命危機に直結するA(呼吸)のサインであるため、気道閉塞の可能性はないか(音がする呼吸をしていないか、陥没様の努力呼吸はないかなど)をまず観察します。
次に、呼吸数や呼吸リズムを観察します。
特に、呼吸数増加は細胞の酸素不足(低酸素症)を鋭く反映するため、循環不全や呼吸不全、敗血症、ショックなどに気づくための指標となります。また、呼吸数減少は麻薬や鎮静薬などの過剰投与でも生じ、高二酸化炭素血症による意識障害の原因となります。
呼吸リズムは代謝性疾患や薬物中毒では規則的であることが多いのに対し、頭蓋内疾患では各種パターンの呼吸障害を呈します。また呼気臭にも注意を払い、観察します。
②循環
意識混濁患者では、頻脈や徐脈、不整脈を認めることが多いため、聴診や触診だけではなく心電図モニタを装着して観察します。
頻脈は呼吸数増加と同様に細胞の酸素不足をよく反映する指標となります。また、150回/分以上の著しい頻脈や、40回/分以下の徐脈、および60mmHg以下の収縮期血圧低下は心拍出量低下による脳虚血を生じ、意識障害(アダムス・ストークス症候群)の原因となります。
一方で、意識混濁に血圧上昇が併存していれば、脳卒中などの頭蓋内疾患を強く疑います。
③神経学的所見
四肢の麻痺、失語、眼球の異常所見(共同偏視や瞳孔不同、対光反射の消失など)、けいれん発作、髄膜刺激症状(項部硬直など)の有無を観察します。
意識混濁とともにこれらの所見を認めた際には、頭蓋内疾患の存在を強く疑います。
④皮膚
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