頭蓋内圧亢進症状として起こるけいれんについて、メカニズムや鑑別のポイントを紹介。けいれんとてんかんの違いや、観察ポイント、適切な対応方法もわかりやすく解説します。
頭蓋内圧亢進症状としてのけいれん
(大脳皮質の障害で出現しやすい)
●前駆症状
●発作の鑑別(部分発作・全般発作、ジャクソン発作)
●共同偏視
●けいれん後の麻痺(Todd麻痺)
●呼吸・循環・意識の評価
↓気づきたいポイント
●四肢の一部や、顔面の不随意運動が持続する
●けいれんが一部だけでなく、全身へ波及し、広がっていく
●けいれんだけでなく意識障害を伴う
けいれんとは?
けいれんとは、全身あるいは一部の筋肉に生じる発作性の不随意収縮です。
けいれんは脳の器質的な障害によるものや、全身疾患による二次的な障害など、さまざまな原因によって発生します(表1)。
表1 けいれんの原因
脳の器質的疾患(症候性てんかん)
●脳卒中 ●脳血管奇形
●頭部外傷 ●脳腫瘍 ●脳炎
●髄膜炎 ●脱髄性疾患
●変性疾患
脳以外の全身性疾患
●水分・電解質異常(低カルシウム血症、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症、低マグネシウム血症)
●糖質代謝異常(高血糖、低血糖)
●腎不全 ●肝不全 ●薬物中毒
●熱性けいれん ●日射病 ●熱射病
また脳の疾患では、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷などで発生します。特に大脳皮質の障害ではけいれんが発生する頻度が高く、急性期以降も遅発性に繰り返しけいれんが発生することがあります(脳出血や脳腫瘍、頭部外傷といった器質的疾患が原因となってけいれんを繰り返す場合は症候性てんかんと呼ばれます)。
けいれんとてんかんの違いは?
なお、よく“けいれん≒てんかん”と捉えられがちですが、けいれんとてんかんは異なります。けいれんは、先に述べたように、骨格筋の発作的かつ不随意な収縮であり、「症候」の1つです。
一方、てんかんは、大脳皮質ニューロンの過剰興奮により同一パターンの発作を繰り返す慢性の「疾患」です。
なぜ「症候」と「疾患」という大きな違いがあるにもかかわらず混同されやすいのかというと、てんかん発作は大脳皮質神経細胞が過剰興奮することで、運動だけでなく、意識や精神、感覚、視覚、自律神経などさまざまな症状の発作を呈します。けいれんは、そのうち一番目立つ運動機能発作であるため、けいれん≒てんかんと考えられがちなのです。
けいれんの事例
●右上肢の部分けいれんが発生し、しばらくすると全身性のけいれんになった
●叫び声をあげて意識消失し、呼吸停止・チアノーゼが見られた
●けいれん後も、右上下肢の麻痺が一時的に持続した
事例が起こったのはなぜ?
■「左皮質下出血」による“大脳皮質障害”を原因としたけいれん

①部分発作・全般発作:部分発作の二次性全般化
②けいれん後の麻痺(Todd麻痺):あり
③呼吸・循環・意識の評価:呼吸停止、チアノーゼ、意識消失
●CT画像により、脳出血(左皮質下出血)が頭蓋内圧亢進を引き起こしていることがわかった
●頭蓋内圧亢進が、運動神経の過剰興奮につながったと考えられる
●運動野の上肢領域周囲でこれらが起こったため、上肢からけいれんが発生した
●けいれん消失後も、一時的に神経活動が低下し、一時的な麻痺が継続している(Todd麻痺)
けいれんのメカニズムと鑑別のポイント
1)脳疾患によるけいれんのメカニズム
脳の疾患では、脳腫瘍、脳出血、頭部外傷などを原因として頭蓋内圧が亢進することにより、運動ニューロンの「興奮」と「抑制」の均衡が保てず、神経細胞の過剰興奮が起こることによって発生します。
2)脳疾患によるけいれんの症状
①けいれん前駆症状
症候性てんかんでは、発作の前駆症状として、めまい、震え、頭痛、四肢のしびれ、ふらつき、顔面・四肢の筋れん縮などが現れることがあります。
また、原因となる病巣に応じて閃輝暗点(せんきあんてん:視野の中心が見えにくくなり視野全体にチカチカとした光が現れる症状)などの視覚異常、異常な雑音や音楽が聞こえるなどの聴覚異常、口の中が苦くなるなどの味覚異常、硫黄のにおいがするなど嗅覚異常を認めることもあります。
②部分発作・全般発作
部分発作は、障害部位に限局した異常興奮に対応する発作です。通常、意識は保たれます。
一方、異常興奮が両側大脳半球全体で同時に始まると、全身性で対称性のけいれん(全般発作)が起こります。通常、意識障害を伴います。覚えておきたい発作の種類は、「強直性発作」「間代性発作」、そして「強直間代性発作」の3種類です(表2)。
表2 けいれんの全身発作の種類
強直性発作

●叫び声をあげて意識消失し、筋肉が硬直して硬くなる
●後ろに反る弓なりの姿 勢(後弓反張)
●瞳孔異常
●呼吸停止(チアノーゼ)
間代性発作

●筋肉が収縮・弛緩を何度も繰り返す
●四肢がガタガタと大きく震える
●意識消失
●失禁
強直間代性発作
●強直性発作のあとに、間代性発作が見られる
③ジャクソン発作
頭蓋内疾患で発生するけいれんは、“病巣がある部分”が発作のスタート地点とされ、部分発作がまず発生します。その後、過剰興奮が改善しない場合は、周りの大脳皮質に波及して、全般性の発作となっていきます。
この部分発作から全般発作に移行していく過程を伴う発作をジャクソン(Jackson)発作といいます。
④共同偏視
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