認知症の終末期ケアのポイントは?告知から死亡退院時の各時期における、看護師に求められる役割を解説します。
- ●患者設定
●認知症の終末期の概要
・アルツハイマー型認知症
・レビー小体型認知症
・血管性認知症
・前頭側頭型認知症
●認知症の余命告知時における看護師の役割は?
●認知症の余命告知時~看取り期における看護師の役割は?
●認知症の臨死期における看護師の役割は?
●認知症の死亡時における看護師の役割は?
●認知症の死亡退院時における看護師の役割は?
患者設定
●Dさん 70歳代女性
●60歳のときにアルツハイマー型認知症と診断された。
●現在は自宅での生活を送っているが、誤嚥性肺炎で入退院を繰り返している。
●60歳のころから、買い物に出かけても何を買いに出たのか忘れ、夫に何度も同じことを確認するなどの症状が出ていた。支払いなどもできなくなり始めたころに、アルツハイマー型認知症と診断された。進行を遅らせる内服治療を行いつつ、夫と家族のサポートも受けながら、穏やかに自宅での生活を送っていた。
●診断から10年目の70歳になったころから、誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、そのつど緊急入院をしていた。入院するたびに、認知機能・身体機能ともに低下していったが、それでも夫と家族のサポートや在宅医療チームのサポートで自宅での生活を続けていた。
●今回の誤嚥性肺炎による入院では、全身状態の悪化が早く、今後の治療方針についての話し合いが設けられた。
認知症の終末期の概要
認知症とは、「①知的機能が持続的に低下する、②複数の認知機能障害がある、③その結果、日常生活や社会生活に支障を来している」の3点を満たし、かつ意識が清明である(せん妄のような意識障害ではない)場合をいいます1。
認知症の症状は、脳の障害によって直接起こる認知機能障害と、何らかのきっかけによって引き起こされる行動・心理症状(BPSD*1)に分けられます。
2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症を発症するという推計が知られており2、2024年に厚生労働省より発表された推計では、2040年には14.9%、高齢者の6.7人に1人が認知症を発症すると考えられています3。
認知症の種類としては、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症があり、この4つは4大認知症と呼ばれています。最も頻度の高いものはアルツハイマー型認知症で、認知症と診断される症例のうち70%程度を占めるといわれています。
アルツハイマー型認知症
〈脳の変化〉
●老人斑や神経原線維変化が、海馬を中心に脳の広範に出現する
●脳の神経細胞が死滅していく
〈初期症状〉
●物忘れ
〈特徴的な症状〉
●認知機能障害(物盗られ妄想、徘徊、とりつくろい など)
●運動機能は比較的保たれる
〈経過〉
●記憶障害から始まり、広範な障害へ徐々に進行する
レビー小体型認知症
〈脳の変化〉
●レビー小体というタンパク質が脳に蓄積して萎縮が進行する
●後頭葉の萎縮
〈初期症状〉
●幻視 ●妄想
●うつ状態 ●パーキンソン症状
〈特徴的な症状〉
※上記に加え
●認知機能障害(注意力・視覚など)
●睡眠時の異常言動
●自律神経症状
●転倒しやすい など
〈経過〉
●好調・不調を繰り返しながら進行する(ときに急速な進行)
血管性認知症
〈脳の変化〉
●脳梗塞、脳出血などが原因で起こる
●病変を起こした部位の血液循環が悪くなり、機能低下を起こす
〈初期症状〉
●物忘れ ●歩行障害
●排尿障害 ●構音障害
●意欲低下 など
〈特徴的な症状〉
●認知機能障害(まだら認知)
●手足のしびれ・麻痺
●易怒性 など
〈経過〉
●比較的急速に発症、段階的に進行する
前頭側頭型認知症
〈脳の変化〉
●前頭葉・側頭葉の萎縮
〈初期症状〉
●身だしなみへの無頓着
●常同行動
〈特徴的な症状〉
●脱抑制・反社会的行動
●自発性の変化
●意味性認知症(物品などの意味がわからなくなる) など
〈経過〉
●ゆっくり、年単位で進行する
認知症の薬物治療はアルゴリズムを参考に、十分に治療効果を検討し使用していく必要があります(『認知症疾患診療ガイドライン2017』p.227「病期別の治療薬剤選択のアルゴリズム」参照)。
アルツハイマー型認知症の治療薬は表1を参照ください。
表1 アルツハイマー型認知症の治療薬

認知症は病気の進行に伴い、徐々に生活に困難をきたし、最終的には食べることができなくなり、寝たきりへと移行していきます。ゆるやかに下降していくのが認知症の経過の特徴ですが、脳血管型認知症の場合は、心不全や腎不全のように、脳血管疾患そのものの増悪とともに階段状に悪化していきます。
こちらもチェック!
認知症の終末期に現れるサインは?
認知症の余命告知時における看護師の役割は?
●認知症は終末期の明確な告知や患者さんの自己決定が難しいため、早期から最期を見すえたケアをすることが必要である。
●後期のアルツハイマー型認知症では、運動機能障害や嚥下障害がみられる。
認知症は、発症してすぐに死に直結する疾患ではありませんが、確実に進行していきます(疾患別予後予測モデル参照)。認知症の経過のなかで、「ここからが終末期」という明確な線引きはありません。よって、明確な余命告知は難しいですが、今までの経過や身体状態から、おおよそを判断されることが多いでしょう。
認知症の終末期ケアは、他の疾患に比べると、告知や自己決定が難しいぶん、初期から最期を視野に入れながらケアに当たることが大切です。また、認知症は、「だんだんその人らしさが遠のいていく」感覚を伴う、曖昧な喪失体験を積み重ねて進行していきます。その体験を積んできた家族へのケアも看護師の役割となります。
Dさんは、アルツハイマー型認知症と診断されています。アルツハイマー型認知症の特徴としては、アミロイドβタンパク質が脳内に沈積することにより、神経原線維変化が生じて神経細胞死に至ります。症状はゆるやかに進行していきます。初期では、記憶障害、見当識障害などが目立ちます。中期になると、実行機能障害が目立ち、料理ができない、言語の理解や表現にも障害が出てきます。後期になると、運動機能障害も出現し、いわゆる寝たきりの状態に近くなります。嚥下障害もみられます。
Dさんも、発症から10年目辺りで、誤嚥性肺炎を繰り返し始めました。現在、積極的な治療をすることが、本人の望んでいることかをあらためて確認する時期が来ていると思われます。
この記事は会員限定記事です。


