がん薬物療法のレジメンの見方・読み方をわかりやすく解説。確認すべきポイントをはじめ、レジメンに含まれる抗がん薬の種類や副作用の理解に役立つ基礎知識を紹介します。

※本記事は『がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版』の内容を再構成したものです。

レジメンの見方

 レジメンとは、抗がん薬の投与計画書である。抗がん薬をレジメンによって管理することで、投与方法や投与量の誤りなどの事故を予防、治療の標準化を図る。

 レジメン内容でチェックしたいポイントを以下に挙げる。

■レジメンのチェックポイント

①抗がん薬の種類、投与量
②投与経路:中心静脈ポート(CVポート)、末梢静脈注射、皮下注射、経口(内服)および、漏出時のリスク
③投与スケジュール:1コースの投与・休薬期間、投与サイクル数
④副作用:投与中に現れる症状も含めて

本書での掲載例
レジメンの掲載例

レジメンの名称

 レジメンの名称は、同じものでもさまざまな呼び方があるため、注意が必要である。これは抗がん薬の略語が複数あることに起因している。

 以前は商品名をレジメン名にも使用していたが、後発品(ジェネリック医薬品、バイオシミラー)が増えており、最近は避ける傾向にある。

 同じレジメンでも臓器が違うと異なる呼び方をする場合もある。同じ薬剤の組み合わせであっても、投与量や投与期間(サイクル)が異なることがあるため、登録する名称には注意が必要である。

抗がん薬による副作用リスクの確認

催吐性リスク

 外来の診察時間は限られているため、患者は医師に副作用を十分伝えきれていないこともある。がん薬物療法で生じる悪心・嘔吐は予防が重要であり、各薬剤の催吐性リスク(高度~最小度の4レベルに分けられる/本書P212参照)に応じて、制吐薬の予防投与は十分できているかチェックが必要である。患者の全身状態や治療歴にも大きく影響を受けるので、初回治療時の悪心評価も行い、変更、調整する。

血管外漏出時の組織傷害リスク

 血管外漏出(EV)によって生じる組織傷害リスクは抗がん薬によって異なるため、リスクに応じて3つのレベル(壊死起因性、炎症性、非壊死起因性)に分けられている(本書P230参照) 。特に高リスクの壊死起因性抗がん薬が使用されている場合は、漏出を予防するための基本として、まずは血管確保を慎重に行う。血管が細く難しい場合は、医師にCVポートの造設を依頼する。

その他のチェックポイント

レジメン併用経口薬

 経口薬は患者自身が自宅で服用する場合が多く、処方忘れがないか十分確認することが重要である。また、患者が服薬について正しく理解できているかどうか、適切に服薬管理できるかどうか、あわせて確認する。

投与順序・投与速度・ルートの確認

 併用薬の確認も忘れずに行う。

休薬期間が過ぎても、治療再開とはならない場合

 開始基準を満たしていなければ、治療は延期となる。例えば骨髄抑制の未回復は、治療を延期する理由の代表例である。

レジメンに含まれる抗がん薬の理解

 がん薬物療法は、従来から行われている化学療法(細胞障害性抗がん薬を用いる)のほかに、分子標的療法(分子標的治療薬を用いる)、内分泌療法(ホルモン療法薬を用いる)、その他の薬物療法がある。さらに最近では、第4の治療法といわれる免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬を用いる)も行われるようになっており、これらの治療は定められたレジメンのもと、さまざまな抗がん薬を使用して実施される。

 がん薬物療法をレジメンに沿って実施する際に、薬剤ごとの特徴を理解しておくことで安全な治療につながる。

レジメンに含まれる抗がん薬の種類

 レジメンは、副作用の異なる薬剤を組み合わせて作られる。レジメンの副作用を知るには、それぞれの薬剤のタイプ1)を理解しておくことが大切である。

 基本となる薬剤は、従来からある細胞障害性(殺細胞性)抗がん薬である。これは細胞分裂への障害を起こす薬剤であり、骨髄抑制、皮膚・粘膜障害が共通して起こる。骨髄のダメージの回復に2~3週間かかることから、多くのレジメンは2~3週が1コースとなっている。

 近年出てきた分子標的治療薬(分子標的薬)は作用機序が異なるため、既存のレジメンに併用する形で使われることも多い。作用を持続させるため、血中濃度を維持する投与方法がとられる。

 免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)は、当初は単剤で使われていたが、相乗効果を狙い既存のレジメンへの併用が増えてきている。副作用は強く出る傾向にあり、注意が必要である。

 乳がんなどのホルモン依存性腫瘍では、ホルモン療法薬が用いられる。悪性リンパ腫ではステロイドにリンパ球傷害作用があるため、抗腫瘍効果目的で投与される。

がん薬物療法と主な薬の種類
がん薬物療法と主な薬の種類の図

副作用の理解

本書での掲載例
副作用の掲載例

副作用の発現頻度

 同じレジメンであっても、適応されるタイミング(一次治療〈ファーストライン〉、二次治療〈セカンドライン〉以降)では副作用の発現頻度は異なる。特に、最近は術前、術後でもがん薬物療法を行うことが増え、再発時の治療が初回のがん薬物療法ではない場合があることに注意が必要である(本書で記載されている副作用のデータは、代表的な適応疾患における、代表的なレジメンによるものであることに注意)。

 副作用の発現頻度は個人差が大きいが、予防によって軽減が可能なものがある。患者の状態を把握し、医師や薬剤師と情報を共有する。

発現頻度とGradeの考え方

 がん薬物療法において、副作用の発現頻度が多くても、重症化しなければ治療は継続されがちである。

 患者のQOLを保つには、副作用のGrade(CTCAE v6.0〈本書P244参照〉では重症度に応じて5つのレベルに定義)にかかわらず、それに対するケアは大切である。“治療継続=副作用がない”ではないことに注意したい。

発現時期

 基本的に、副作用はサイクルが進むにつれて蓄積していく。

 例えば、パクリタキセルやビンクリスチンなどの微小管阻害薬で生じやすい神経毒性は、投与後に症状が強くなるものの、その後に改善する。しかし、サイクル数を重ねるにつれて毒性が蓄積していき、元に戻らないまま次の治療を受ける場合が出てくる。この場合、治療後も神経障害が残ってしまう可能性がある。そのため、一過性の副作用ではなく、蓄積している副作用にも注意が求められる。

 抗がん薬の副作用は、治療中だけではない。肺毒性や心毒性は治療後数年~10年以上経過してから現れることもあるため、若年者へのがん薬物療法は事前に説明が必要である。

 必要に応じて、薬剤の減量・中止を判断する。

 副作用の発現時期は個人差が大きいため、1サイクル目に起きた副作用の発現パターンを把握する。

CHECK

●レジメンを設定することの最大の目的は、がん薬物療法において医療ミスをなくすことである。しかし、同一レジメンが複数の診療科で登録されてしまうと、それぞれの診療科の特性や好みによって、投与時間や前投薬が異なってしまい、混乱を招き、医療ミスにつながる。レジメンは診療科だけでなく、入院-外来など投与場所が異なっていても、内容は統一されている必要がある。そのため、医師・看護師・薬剤師の職種だけでなく、診療科、部門すべてにまたがって決定していく必要がある。

●最近では、薬剤の投与にかかる時間も、外来がん薬物療法の混雑を回避するために短縮される傾向にある。古いレジメンのままで運用していると、長い投与時間のままになっていることも多いため、最新知見にあわせて定期的にレジメン内容を見直すことが必要である。

1) 国立がん研究センターがん情報サービス:薬物療法 もっと詳しく 薬物療法で使われる薬の種類.https://ganjoho.jp/public/ dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html(2026.4.10.アクセス)

\続きは書籍で/

がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK第2版

がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版
下山達、山村康比古、松尾有花 編
B6・288ページ
定価:2,750円(税込)
照林社

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