がん薬物療法の副作用としてみられる末梢神経障害について解説。発症のしくみや症状を起こしやすい薬剤、アセスメント、ケア、患者説明のポイントなどをわかりやすく紹介します。
※本記事は『がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版』の内容を再構成したものです。
抗がん薬による末梢神経障害のしくみ
1 感覚神経の障害(急性)
●末梢のしびれや感覚の鈍麻、チクチク感(電気が走るような疼痛)を生じる。
●薬剤の総投与量に比例(例:オキサリプラチンでは800mg/m2)して発現することが多い。
●感覚優位の末梢部位(手袋靴下型)で障害が始まる。運動は比較的保たれるが、進行すると運動障害を伴う。
2 運動神経の障害(慢性)
●ボタンが掛けづらい、力が入りにくいなど、動作に支障が出る。
●筋萎縮/麻痺や腱反射の低下による歩行障害を生じる。
3 自律神経の障害
●便秘、イレウス、排尿障害、発汗異常、起立性低血圧などを生じる。
治療
●予防が基本であり、障害が残る前に抗がん薬の減量・中止する。
●予防:運動、冷却(タキサン系薬剤)■しびれ・疼痛に対する治療
推奨される薬剤:デュロキセチン(サインバルタ®)
臨床で用いられる薬剤:プレガバリン(リリカ®)、NSAIDs、オピオイド、ビタミンB12製剤、牛車腎気丸
その他:運動
末梢神経障害の症状を起こしやすい薬剤
●白金製剤、微小管阻害薬が代表的な薬剤である。
●微小管阻害薬が結合した抗体薬:トラスツズマブ エムタンシン、ブレンツキシマブ ベドチン
●多発性骨髄腫で用いる薬剤:ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド

末梢神経障害のアセスメント
■発現リスクのアセスメント
累積投与量/曝露期間:脊椎転移、脳転移
神経障害を伴う基礎疾患:糖尿病、貧血、低アルブミン血症、元からある神経障害
患者背景:高齢、飲酒習慣、喫煙
末梢神経障害のケア
1 症状の予防·緩和
●運動療法による末梢神経刺激:手の掌握運動、軽度の散歩、ストレッチの実施
●末梢循環の改善:マッサージ、手浴、足浴、炭酸系入浴剤の使用、靴下や手袋の着用
●症状増悪の回避:革靴やハイヒールを運動靴に変更、下剤で排便コントロール
CHECK
●オキサリプラチンの急性知覚障害を予防する(寒冷刺激を避ける)。
冬季:外出時の手袋・マスク・マフラー・耳当て、温水の使用
夏季:エアコンの冷気、アイスクリームなどの冷たい食品に注意
2 二次障害の防止(感覚障害に伴うリスク)
●けが、転倒の防止:料理時の刃物でのけが、スリッパでの転倒に注意
● やけどの防止:こたつ・ストーブ・湯たんぽによる低温やけど、調理時の器具の取り扱いに注意
3 精神的な支援(症状がよくならないことへの不安)
●治療終了後も、患者自身が症状に向き合えるように援助
末梢神経障害の患者説明・セルフケア支援
●医療者に末梢神経障害を早期に伝えることが重症化の予防につながるため、末梢神経障害で生じる症状について具体的にイメージできるように説明
➀運動神経の障害
手足の力が入らない、文字が書きづらい、物をよく落とす、椅子から立ち上がれない、歩きづらい、階段が上がれない、飲み込みづらい
➁感覚神経の障害
手足がしびれる(ビリビリ・ジンジン)、痛み、感覚がない 高い音(体温計の測定音など)が聞こえにくい、耳鳴りがする
➂自律神経の障害
便秘
医師からのワンポイント
●患者は治療が中止したり、薬剤が減量されてしまうのを恐れ、副作用について実際よりも軽く伝えてくることがある。患者にとっては、「これまで経験したことのないような未知の感覚」であり、他人にはわからないため、患者自身に語らせることが必要となる。
●日常的に患者との関係性を築き、気軽に話せるコミュニケーションに努め、医療者と患者の評価に乖離が起こることがないように努める。
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がん薬物療法レジメンまるわかりBOOK 第2版
下山達、山村康比古、松尾有花 編
B6・288ページ
定価:2,750円(税込)
照林社

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